熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

会員中小企業家に向けての提言

私は大学では応用物理学を専攻し、大学、大学院と3年間風力エネルギーの研究をしていました。東日本大震災後、原子力発電の存続に関する議論が沸騰し、自然エネルギーへの関心が高まっています。太陽熱エネルギーの開発や風力発電のニュースが新聞やテレビで報道されると当時の研究を懐かしく思い出します。民法のテレビ番組に、「和風総本家」という番組があります。その中では、日本を支える職人の話が放送されるのですが、製造業大手の会社の経営不振が大きく取りざたされる今の日本において、生き残りをかけた、しかし、職人魂を失わない中小企業の取り組みを紹介しています。中国や韓国や東南アジア等に製造拠点を移していかざるを得ない日本の企業が、世界の中でMade in Japanを復活するキーはどこにあるのでしょうか。


大学卒業と同時に高校数学の教員免許を取得していた私は、その後教育の道に身を投じることになりました。このような日本の現状を打破していく原動力は、やはり教育にあると思います。長期戦略を立てることはとても待ってはおられない状況ではありますが、しかし、国を立て直すためには子どもを育てることが必須です。ノーベル物理学賞や医学・生理学賞における日本人の受賞等をみれば、日本の教育内容そのものは高いレベルにあります。しかし、明治以来続いている高等教育に破綻が来ていることも事実です。自分で考える力、発想力、自分の考えを論理的に述べる力、世界の政治・経済・文化を自国のそれと比較して原因や課題を読み取る力等。私たち現場の教師が変えることができること、変えなければならないことはいくらでもあります。


私は、現在ひのくに高等支援学校という特別支援学校に勤務しています。熊本県で唯一軽度の知的障がいのある高等部だけの学校です。本校の生徒は3年間で6回の企業等の現場実習を経て、就職します。卒業生の約6割が一般企業に就職しています。入学する前から様々な生活歴をもっており、中には親から虐待を受けて、幼い頃から施設に入所し、施設から本校に通う生徒も少なくありません。5歳の時親から虐待を受けて、施設に入所した生徒がいます。小学校、中学校と施設から通学し、本校では2年生のとき不登校になりました。しかし、「このままでは嫌なことから逃げているだけだ」と気づき、少しずつ学校に行くようになり、3年生になって周囲の環境が変わると、学校が楽しくなり、少しずつ前向きに物事を考えられるようになりました。そして、9月の現場実習では、就職を目指して必死に頑張り、10月には求人票をもらい、入社試験に向けて勉強した結果、見事就職を勝ち取ることができました。普通の高校生からみれば、小さな事で悩んでいたのかも知れません。しかし、障がいのある、まだ17歳のこの生徒は生きていく重みと真剣に向き合ってきました。それでも成長する過程で、自分の変容を冷静に見つめ、自分自身を叱咤激励して、自分に負けないように必死に努力していく様子がよくわかります。友達や先生方など周囲の暖かい見守りも大きな支えになっています。障がいをもっている人に対してだけ特に支援が必要であるというわけではないのです。人を理解し、見守り、そのとき適切な援助をどう提供できるかが必要なのです。道を切り開くということは自分に負けないことも必要ですが、周囲がどう導くかということもたいへん重要であると思います。物作りでも何でも、本質を追求していくことがすぐに成果に繋がることはないのかもしれません、しかし、それでも人間には信じられないほどすごい力があると思います。「ものをつくる」前に「人が人をつくる」社会であってほしいと思います。


2013年4月号掲載

熊本県立ひのくに高等支援学校 校長 牛島経緯郎

熊本県立ひのくに高等支援学校 校長
牛島 経緯郎

昭和28年4月山鹿市生、宮崎大学大学院工学 研究科修了。
56年から千葉県の県立高校に 勤務。61年から荒尾高校、湧心館高校全日制 勤務を経て、平成12年から2年間、県の私学 文書課に勤務、東稜高校、県教育委員会教育 政策課勤務後、17年から教頭として大矢野 高校、その後、県立松橋西養護学校教頭、教育 センター、22年菊池養護学校校長、24年県 立ひのくに高等支援学校校長、現在に至る

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