熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

地域社会に求められる大学の役割

我国の人口減少傾向には歯止めがかからず、特に地方においては急激な少子化、過疎化が進行することが予測されています。熊本地域も例外ではなく既に公立小中学校、高等学校の廃校発生数は全国でも6番目と上位に位置し、今後益々過疎化が進行することが予想されます。一方、都市圏の人口減少は緩やかなように見られますが、若者の晩婚化、未婚率の増加、一次産業を中心とした地方産業の衰退に伴いやがては我国全体の人口減少に繋がると言われています。


ここ数年、地方再生あるいは地方創生の掛け声とともに、地域に受け継がれてきた力を再評価し、地方の活力を高める方策、仕組み作りが急がれています。大学においても次世代を担う若者が地域の魅力、課題を理解し、地域文化、地域社会の継承に資する地域マインドの育成が求められています。


熊本県立大学は熊本女子専門学校、熊本女子大学を経て67年の伝統を重ね、これまで17,000名を超える卒業生を社会に送り出してきました。男女共学化の際に創設された社会科学系学部、総合管理学部は今年でちょうど20年を経過し、生活科学部を改組した環境共生学部も再編以来15年が経ち、卒業生は熊本地域や全国の企業、行政機関、大学・研究機関など広い分野で活躍しています。本学は大学の理念として「総合性への志向」「地域性の重視」「国際性の涵養」を掲げ、社会の変化に柔軟に対応した教育研究を目指してきました。地方再生、グローバル化に向けた人材養成が声高に求められる現在、本学の教育理念は時代を先取りしたものです。


本学では熊本地域全土をキャンパスと捉え「地域を学び、地域で学ぶ」を実践し、地域の自然、社会、文化を教育資源として活用する試みを行って来ました。地域の人々との恊働作業の中から地域課題を体験し考察する「もやいすと」育成プログラムは今年度で10回目の開講になります。地域との連携活動は他大学、自治体等からも注目され、平成21年度には大学の地域貢献度全国ナンバーワンに輝きました。こうした取り組みが評価され、「『もやいすと』育成と産官学民の対話と恊働で拓く地域の未来」が文部科学省平成26年度「地(知)の拠点整備事業」、COC(Center of Community)に採択されました。このCOC事業は大学が自治体と連携し全学的に地域を志向した教育研究を進め、地域創造に寄与できる人材の育成を目指すもので、熊本県下では熊本大学と本学の取り組みが採択されています。


本学では地域貢献事業を推進するため、以前から地域交流センターを設置し、地域の皆さんとの共同事業をコーディネートしてきました。平成18年、法人化に際し、地域連携センターとして体制を充実させ、県内自治体、企業、研究機関や諸団体、合計20団体と包括協定を締結し、大学が有する知の力を地域の課題解決に結びつける役割を果たして来ました。昨年4月からは地域連携・研究推進センターに改称し、地域課題解決に向け更に積極的に取り組むようにしました。


COC事業ではこれまで主として自治体職員と教職員の間で行ってきた協議の場を広く学生や地域、企業の方々も交え「もやいすとフューチャーセンター」を開設し対話の場を作ります。そこでは多様なテーマについて未来志向の協議を重ね地域課題解決への糸口を見いだして行きます。


地域の活性化には地場産業の育成、振興が欠かせません。若者が活躍する熊本を目指して大学との対話の輪を広げていただきたいと考えます。



2015年2月号掲載

熊本県立大学 学長 古賀 実

熊本県立大学 学長
古賀 実

昭和24年北九州市生まれ
47年3月福岡教育大学教育学部卒業、北九州市環境衛生研究所入職、54年4月産業医科大学医学部講師、助教授、共同利用研究センター副センター長、62月年米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校公衆衛生学部博士研究員(平成元年1月まで)、平成9年熊本県立大学助教授、11年環境共生学部教授、学生部長、副学長を経て22年4月学長、理学博士(九州大学)、専門は環境分析化学

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