熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

熊本地震による混乱と失敗から学んだこと

熊本地震から3年半以上が経過し、熊本市はその復旧復興に向け着実に邁進しています。と同時に、あの混乱の中で行政機能を保つことができなかった反省に立ち、様々な課題を検証し、その対策を講じてまいりました。そして、あらゆる危機管理事象に対し行政がどうあるべきか、少しずつではありますが、確実に対応力を高めています。
 そこで、危機管理対策の中でも私が最も大切であると実感した、BCP「業務継続計画」と「受援計画」策定の心得(エキス)についてお話しします。
 企業においては自然災害以外にも、景気動向、関連企業の倒産、不正や不祥事によるイメージダウン等々様々な事柄で一気に奈落の底に突き落とされることも避けられないのではないでしょうか。
 そういう時にあらかじめ対応策を定めておき、そのことを社員全員が共有できていたら、経営の危機を回避することができます。
 BCPは危機事象が発生した際に、何を優先して行うか、そのためには何をやめるか、ということを明確に決めておくためのものです。
 この際に大切なのは、やめる勇気です。
 危機事象に立ち向かうには限られたリソース、特に人員をいかに効果的に再配置するかが重要で、しかもスピーディーに判断しなくてはならず、事が起きてから話し合ったり従業員の意見を聞いたりする時間はありません。初動時の混乱期には、何をしていいのかすら分からない状況に陥ります。
 そのことを見越して、あらかじめ何からやめていくかを決めておくのです。繰り返しになりますが、何かを優先的やるということは、何かをやらないということです。やめることを是とする考え方こそが BCP策定の極意です。
 堂々と仕事をしない。思い切って一旦やめてしまう。そのリスクと効果を事前に検証しておくのも大切でしょう。また、BCPを策定することにより、自社の強みや弱みを再認識する契機にもなります。
 そして、BCP策定においてさらに重要なことは、 BCPの存在とその内容を全ての社員で共有しておくことです。全社員が同じ方向を向いていたら、その推進力はどんどん大きくなります。しかし、方向性が違う者がいれば、進む力が大きく阻害されます。ましてや幹部の中に理解していない者がいたら、そのマイナス影響は大きくなります。

W杯ラグビーでの日本代表の快進撃は「One Team」の合言葉に象徴されるように、選手やスタッフやその家族に至るまで、皆が同じ方向を向いて4年間進んできた結果の証明です。
 意識の共有は何事にも代えがたいパワーであることを認識していただきたいのです。
 そのためには訓練が大切になります。度重なる訓練がその精度を高め、意識の風化を是正します。
 受援計画については、特に親会社や連携企業などからの支援が想定される企業については、是非策定しておいていただきたい。
 せっかく支援してくれる人がいても何をしてもらうのかが分からなかったら却って邪魔になることもありますし、必要のない支援は有難迷惑にもなります。藁をもすがる思いだからといって何でも受け入れたら却って混乱し収拾がつかなくなります。
 受援計画を策定していれば、有事の際に何が必要か、どの程度必要かなどの想定ができるため、逆に他企業に対し支援を行う際に役に立ち、相手方にとってより有効な支援を提供することができます。

これまで述べてきたことは、全て私の実体験に基づく提言です。業務継続計画と受援計画の重要性を少しでもご理解いただけたら幸いです。もっと詳しい話をお聞きになりたい方は、どうぞ遠慮なく、熊本市の中央区長室にお気軽にお越しください。

2019年12月号掲載

熊本市中央区長 井上 学

熊本市中央区長
井上 学

1985年 熊本市役所 入庁
2009年 熊本市民病院事務局総務課長
2014年 教育委員会事務局首席審議員
2016年 市民生活部長
2017年 危機管理監
2019年 中央区長

最新の特集記事

tei201912_01_s
各界からの提言
2019年12月号掲載

熊本地震による混乱と失敗から学んだこと

熊本市中央区長 井上 学

熊本地震から3年半以上が経過し、熊本市はその復旧復興に向け着実に邁進しています。と同時に、あの混乱の中で行政機能を保つこ...

moko201912_ai
プロジェクトもっこす 放送日記

2019.10.28放送分

社会福祉法人白いキャンバス福祉会施設長 今坂豪志支部長、熊本同友会事務局員 守田雅規さん

ゲストの今坂豪志さん(写真左)、守田雅規さん(写真右) 今月は人吉支部より、社会福祉法人白いキャンバス福祉会施設長の今坂...