熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

「やってみなはれ」の真意

自民党総裁選は権力闘争が可視化されました。総裁、首相に選ばれた岸田文雄さんがアピールしたのは自らの「聞く力」。トップに必要な資質だと思います。

高校時代の同級生によると、話し合いの最後に決まって意見を求められるのが岸田さん。頼りがいがあり「ボクらのパパ」と呼ばれていたそうです。とはいえ、首相となれば取捨選択も不可欠。要は国民の声なき声にいかに耳を澄ませられるかでしょう。

また、大勢の意見が常に正しいとは限らないのもご承知の通り。トップとしての決断の難しさがあります。例えば、今年9月に丸20年になった米中枢同時テロ。当時米国全土に復讐心があふれました。連邦議会での武力行使を認める決議は上院が98対0、下院は420対1の賛成多数で可決。しかし、反対1票の意義深さはその後を見れば明らかです。

もう一つ。中国の習近平国家主席(共産党総書記)は来年秋の党大会で異例の3期目を狙います。2018年には国家主席の連続3選禁止規定を削除する憲法改正を実施。全国人民代表大会の投票結果は賛成2958、反対2、棄権3でした。議場は反対票の存在にどよめいたようですが、全会一致でない点にほっとします。

何事にも最終判断を下すのがトップの役割。私も覚悟していますが、少数意見も尊重しながらどこに重きを置くのか考えさせられます。

ところで、皆さまの経営方針は何でしょう。私の好きな言葉に「やってみなはれ」があります。関西弁の響きが何とも言えません。サントリーホールディングスの創始者・鳥井信治郎さんの志とされ、同社の社風として受け継がれているそうです。

この言葉は寛容な経営トップが「自由にやれ」と言っているように聞こえますが、本来「みとくんなはれ」という言葉が続き、セットだそうです。起こり得る全ての事態を想定した上で、やるなら徹底して食い下がれとのニュアンスが「やってみなはれ」にあります。背中を押された側は、期待に応えたいとの思いを込めて「みとくんなはれ」と言い返す。一方的でなく相互的。信頼関係があってこそ成り立つ言葉にほかなりません。

これを弊社の会議で語り、社員に一斉メールしました。相談を受けたら「やってみなはれ」と言うように努めますから、皆さんも「みとくんなはれ」と応えてください、と。この言葉は大企業より、むしろトップと社員が近い中小企業でこそ生かせそうです。コロナ禍で弊社の業績も厳しい状況ですが、信頼感を持って一丸となれれば克服できると考えています。

2021年11月号掲載

株式会社エフエム熊本 代表取締役社長 荒木正博

株式会社エフエム熊本
代表取締役社長
荒木正博

昭和34年4月菊池市出身、済々黌高、九州大農学部農政経済学科卒業。昭和58年4月(株)熊本日日新聞社入社。平成16年3月東京支社編集部長、平成25年3月政経部長、平成28年3月東京支社長、平成29年3月編集局長。令和3年6月に取締役論説委員長を退任し、同月(株)エフエム熊本代表取締役社長(現職)に就任。

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