各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
熊本発の健康福祉モデルの創造 ~まちづくり型福祉を中心に~
本県の社会福祉の推進につきましては、日頃から御理解を賜り、また、特に障がい者雇用に積極的に取り組んでいただき、感謝申し上げます。
さて、大きな変化の時代の中でありますが、いつの時代も、地域が主体性を持ち、内外の知恵の融合を図りながら、地域の有形無形の資源を活用していくことによって、未来は拓けていくものと考えています。
このようなときに、私が思い浮かべるのは、ドラッカーの言う、「イノベーションのための7つの機会」です。具体的には、①予期せぬ成功と失敗を利用する、②ギャップを探す、③ニーズを見つける、④産業構造の変化を知る、⑤人口構造の変化に着目する、⑥認識の変化をとらえる、⑦新しい知識を活用する、というものです。
熊本発の健康福祉モデルの創造 -これが、イノベーションということも念頭に置いた、県健康福祉部施策方針のキャッチコピーです。
県では、近年、地域福祉支援計画を推進していますが、この計画は、全国的に見ても、大きな特徴を持っています。その一つは、社会福祉協議会活動や民生委員活動の活性化等の「従来からの地域福祉」と「まちづくり」の融合を図ったことにあります。二つ目には、当事者中心・利用者中心ということです。これによって、制度ありきではなく、当事者や現場のことをまず考え、高齢や障がい、児童などの縦糸を横糸でつなぎ、また制度で不十分な場合は、サービスの上乗せ・横出しをするなど、「総合化」を図ろうとしていることにあります。
同計画の大きな柱であります「地域の縁がわづくり」のモデルとして、県営健軍住宅の建て替えに併せ、住宅部分のユニバーサルデザイン化を図るとともに、1階に福祉機能を導入しました。その際、地域との協働が大切であると考え、整備構想策定段階では、健軍商店街や校区自治会等と意見交換を行い、高齢者を対象とした小規模で多機能な居宅介護、障がいのある方の就労の場としての喫茶・レストラン、子どもの一時預かり、住民サロンなど、子どもから高齢者まで誰でも利用できる空間になっています。地元メンバーも理事に加えて結成された運営主体のNPO法人「おーさぁ」では、その後、健軍商店街の空店舗を活用して、ニート・フリーターを支援する「若者サポートステーション」、住民活動を支援する「ぐんぐん市場」を運営するようになりました。
「地域の縁がわ」は、様々な類型で県内各地に広がりつつあり、現在、約200箇所になっていますが、その発展型として、平成21年度から「地域ふれあいホーム」の設立を支援することも始めました。山鹿市の「いつでんどこでん」や熊本市植木町の「ばあちゃんち」、山都町の「こころ」、八代市の「とら太の家」など、県内外から見学者が訪れているところもあります。皆様もどうぞご見学ください。そして、サポーターになっていただき、また、起業のヒントにしていただければ幸いです。
「地域の縁がわ」や「地域ふれあいホーム」、更には地域の絆を再生する「地域の結いづくり」、社会的起業やソーシャルファームも視野に入れた「地域のちからおこし」等によって、福祉のイノベーション・まちづくり型福祉の展開を図って参りたいと考えています。
いずれにしても、「利用者中心」ということと「型にはまらないこと」を追求する中から、新しい事例が生まれ、それがひいては、我が国の福祉や保健・医療の形を変えていく力になっていくことを願っています。
2010年6月号掲載
熊本県健康福祉部 部長
森枝 敏郎
昭和25年生。
九州大学経済学部卒業。
昭和49年熊本県庁入庁。
60年度から2年間、小国町に派遣され、まちづくりの理論と実践を学ぶ。
平成9年度には地域づくり推進室長。
水俣振興推進室に5年間(平成2 ~ 6年度)在籍するなど、水俣との関わりも長く、ライフワークでもある。
健康福祉分野では高齢保健福祉課長、健康福祉政策課長、健康福祉部次長を歴任。20年4月から現職
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