各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
「先憂後楽」(備えあれば憂いなし)
上杉治憲(後の上杉鷹山公)は江戸櫻田にある藩邸の中でじっと庭の池の中を見ていた。
池の中には沢山の魚がいた。金魚もいれば鯉もいる。ハヤやヤマベもいる。フナもいる。生れや育ちで魚の生き方もずいぶん違う、違いは泳ぎ方にあらわれる。
泳ぎ方が池の中におけるそれぞれの意気込みであり、この世に対する態度であった。
池の全体像をとらえて悠々と自信にみちて泳ぐ鯉。泳ぐことよりも底に坐って怠けていることの多い金魚。
飽ない理由は治憲が池の中の魚を藩邸の家臣に見たてているからである。そうゆう考えで魚を眺めていると実に面白い。金魚も多い、特に国もとの米沢にいるのは金魚ばかり、そういえば上杉家には鯉がいないようだ。藩全体をみわたしても藩政を改革する鯉がいない。
いや私が、そうならなければならない、だが力がない。
一体、米沢藩をどうしようと考えているのだろう。
みんな藩をつぶしてもかまわないと考えているのだろうか
(小説「上杉鷹山」童門冬二著)より
今の日本国は大変な財政難に陥っています。財政健全化を考えるとき日本の政治家に国の将来を託せる気概のある鯉が(大変失礼な表現ながら)いるでしょうか、いやきっといるはずです。一時的には苦しさ(先憂)があろうとも、日本の将来を明るく(後楽)導ける人材が。金融機関は、ご存知の方も多いと思いますが「資産査定」を行っており、金融機関の資産(貸出金、余資運用)が健全かどうかで、5つに区分されます。
資産の毀損に応じて毎期利益の中から、貸倒引当金や評価損金を計上。このやり方で日本国の財務内容を区分すると収支バランスは年間支出の半分以上を借金に頼り、借金の残高は国・地方あわせて1,000兆円とも言われています。経営者の健全化方針も見えて来ません。正に下から2番目にかろうじて区分されるのではないでしょうか。
話が最初から暗く成りましたが、日本の産業を支えているのは、大企業を頂点とするも中小企業であり、正に中小企業家同友会の皆さん方であります。経営トップの方々が失敗を恐れず、行動しながら考え、考えながら行動し、思考が柔らかでフットワークが良く、常に「先憂後楽」の企業家スピリットが溢れています。
一歩前に踏み出す力、常にこれがベストかと考え抜く力、他の中小企業家との「つなぐ力」チームワーク力。経営者自らが汗を流し、知恵を出し社員の方々に自分の背中を通して実地教育で人材育成を図って育てておられます。
企業の血液である社員をいかにOJTによって企業の将来を託せる「フナ」や「鯉」に育てるのか、常に厳しい中にも温い心で、コミュニケーションで育成しておられることに心より敬服しております。
最後に私共、協同組織の信用金庫の精神は「相互扶助」「共存共栄」であり定款に営業区域も定めており、区域以外での営業は認められません。
具体的には、旧鹿北町では森林資源を活かした企業の誘致活動を行い、旧菊鹿町では現工業団地など地域産業を活かせる企業の誘致活動を行います。また、旧鹿本町では工場跡地の情報収集と企業の立地を推進し、鹿本町企業連絡協議会を活用した地域産業の振興を図り、旧鹿央町では高速・国道等のアクセスを活かし農産物・加工品の物流を活かした企業の誘致活動を行います。さらには、旧山鹿市では雇用労働者の住環境整備・改善を図りながら、本市産業の発展を目的に中心的役割を行っていくこととしています。
また、営業内容も中小企業、個人事業者の方々の専門金融機関と定めてあり、地元の中小企業家同友会の方々の繁栄は正に私共の目ざす経営理念であります。
総合病院の銀行(株式会社)、日頃かかりつけの病院、医院が信用金庫です。
政府も一昨年「全国緊急保証制度」、昨年の「中小企業等金融円滑化法」を施行。私共信用金庫も中小企業や個人事業者の方々の金融支援、経営相談、ビジネスマッチング等に全力を上げて取組んでおります。
県内4信用金庫(熊本第一、熊本中央、天草、熊本)83店舗、親機関である信金中央金庫が、09年から3 ヵ年計画で「わがまち企業家!!発掘プロジェクト」で皆様方のご支援に取組んでおります。
「元気を出そう熊本」是非近くの信用金庫へ気軽にお立寄り下さい。
2010年5月号掲載
熊本信用金庫 理事長
吉本 國勝
昭和16年12月19日生まれ、熊本県下益城郡松橋町出身、35年3月熊本県立商業高校卒、35年3月8日熊本信用金庫入庫、平成6年2月業務部長、7年5月常勤理事、13年6月常務理事、15年6月26日理事長就任
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