各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
今生きる私たちが豊かな自然環境を後世に引継ぐ努力を
今や九州を代表する観光地としても有名な「阿蘇」は、雄大な草原をはじめとする素晴らしい自然環境・景観により支えられています。これらの山々や草原は、水を蓄え、命を育み、人々に安らぎと活力を与えてくれます。
しかしながら近年、基幹産業である農畜産業の低迷や地球温暖化などにより、その国民共有の財産ともいえる阿蘇の自然環境・景観は失われつつあるのが現状です。
阿蘇市としても、「後世への保存・継承が今に生きるものの義務」として受け止め、取り組みを進めています。熊本同友会におかれましても、その幅広い活動の中で、「同友の森づくり実行委員会」を組織され、熊本の命とも言うべき地下水を守るための涵養林育成やそのための植樹等の活動を行われておられますことは大変素晴らしいことだと感じております。
自治体と企業、立場こそ違いますが、それぞれの立場で“今何が出来るのか”を考え、行動に移すことによって、50年後、100年後も、人々が今以上に自然の恩恵の中で心身ともに満たされた生活を送ることができるものです。
阿蘇市では、現在、この豊かな自然環境を後世に残すため、地域住民あるいは阿蘇に思いを寄せていただく方々とともに幅広い取り組みを行っています。
その幾つかの取組み事業を紹介し、同友会の方々にも知っていただき、相互の理解のもと幅広い取り組みができればと思っております。
①世界文化遺産登録・世界ジオパーク認定への取り組み
現在、熊本県と阿蘇郡市7市町村で、「阿蘇世界文化遺産推進室」を設置し、火山との共生により育み現代まで継承されてきた歴史的遺産や文化的景観を世界的な保護の視点に立って維持保全しようと世界遺産登録に向けた取り組みを進めています。また、阿蘇カルデラを中心とした地質遺産を世界ジオパークに認定するための取り組みも併せて行なっています。達成すれば、阿蘇地域が「世界の阿蘇」として高く評価されるとともに、環境保全に対する保全管理体制の強化、保全意識の向上や地域活性化につながるものであり、まさに後世に引き継ぐための取組みのひとつとなります。
また、阿蘇カルデラを中心とした地質遺産を世界ジオパークに認定するための取り組みも併せて行なっています。
達成すれば、阿蘇地域が「世界の阿蘇」として高く評価されるとともに、環境保全に対する保全管理体制の強化、保全意識の向上や地域活性化につながるものであり、まさに後世に引き継ぐための取組みのひとつとなります。
②「ASO環境共生基金」の設立
阿蘇の自然景観を国民共有の財産として維持・保存、後世に引き継ぐことを目的に基金を設立し、阿蘇に思いを寄せていただける多くの方々のご支援を寄付として受けながら、阿蘇の自然環境や景観の保護に関する各種事業を実施しております。
熊本・阿蘇の大地から、環境保護に対する社会機運が高まり、環境保全に対する活動が広まっていくことを期待しております。
③バイオマスエネルギー地域システム化事業
国内最大の規模を誇る阿蘇の草原を守ろうと、現在その草資源を原料としたバイオマスエネルギー地域システム化事業「ガス化発電システム」の構築を目指しています。
豊かに見える阿蘇の草原も、有畜農家の減少や家畜頭数の減少により未利用の草地が増加し、草原の雑木化や荒廃が危惧される現状にあります。大地の恵みとして決して枯れることのないこの草資源をバイオマス発電の原料とすること、また、未利用草地の草を刈り取りその原料とすることで草原の保全にもつながります。現在、5年間の実証実験を終え、実用に向け取り組みを進めています。
以上のような取り組みを進め、国際環境観光都市“阿蘇市”の実現を目指しています。
熊本県中小企業家同友会の皆様方とともに、郷土に暮らし、郷土を愛し、阿蘇市の将来像を描きながら、阿蘇の歴史的遺産・文化的景観を守り続け、次の世代にバトンタッチしたいと考えておりますので、皆様方におかれましても、引き続きのご理解とご支援をよろしくお願いします。
2010年4月号掲載
阿蘇市 市長
佐藤 義興
昭和24年8月6日生まれ、昭和37年3月宮地小学校卒業、40年3月一の宮中学校卒業、43年3月熊本県立阿蘇高等学校卒業、47年3月近畿大学卒業、47年4月国会議員秘書、平成元年6月建設大臣秘書官、3年11月国務大臣経済企画庁長官秘書官、6年1月政策担当秘書、17年3月6日初代阿蘇市長当選、21年2月22日阿蘇市長2期目当選
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