各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
外に向かって変化しよう
昨年は、かのダーウイン生誕200年、『種の起源』が世に出て150年であった。そのダーウインが、“It is not the strongest of the species that survives, nor the most ntelligent, but the one most responsive to change.” すなわち、強いものが生き残れるのではない。賢いものが生き残れるのでもない。変化にもっとも対応できるものが生き残るのであると述べている。生物の進化を論じたこの文は、現在の世の中の競争社会での生き残りを、いみじくも的確に示唆しているではないか。
私が医学部学生として山口県から熊本に来て50年を過ぎた。この熊本から動きたくないと思う。それほど私にとってすばらしい場である。しかし、敢えて注文を付けるとすれば、熊本は囲いの文化、内なる方向にベクトルが働いている印象を時に感じるのである。それは私のように外から熊本にやって来た者が感じるばかりではないようだ。外で活躍されてる熊本県人、例えば熊本日日新聞の「持論県都の姿」で、北里光司郎氏(在京の県関係経済人の会 東熊会会長)は「熊本は明治維新以降、伝統を守る場所として役割を果たしてきた。だが、守りだけでとなると必ず成長の機会が少なくなる。肥後もっこすという個性はすばらしいが、物事が発展していくときは、ある程度自分を抑制してでも解放していくエネルギーも必要だ」と述べ、また中野健二郎氏(関西経済同友会代表幹事)も「熊本は目線が狭く、内向きの意識が強い。変化を好まず、現状に甘んじているが、今後は時代の変化に臨機応変にやっていかないと活性化できない」と檄を飛ばしている。まさにダーウインの至言そのままではないか。
熊本市は政令都市に生まれ変わる。新幹線はやってくる。そのような激変の中で、合併後の区割りで時間を費やす時期ではないと考える。さっさと決めて、不都合は後で考えればよい。今は熊本の特徴を最大限に生かした拠点つくりにまい進すべきではないだろうか。熊本は医療、農業そして観光の資源に溢れている。それらをまとめて売り出す仕掛けを具体にせねばならない。それは将来、州都を目指す時期が来たときに備えておくべきことでもある。州都の最も重要な機能は危機管理であると考えている。今回のパンデミック騒動で、われわれはいささか勉強したはずである。人口過密の都市で感染症が流行すればもはや危機感どころではない。まして人の出入りの激しい商業都市では危機管理の能力は発揮できない。熊本には水がある、食糧がある。それを九州全域に配給できる自衛隊がある。医療においては、どこにも引けをとらない施設がある。日本で唯一のエイズ学研究センターが熊大にある。そして今回の新型インフルエンザワクチンの製造を担った化血研がある。このような特徴を十分考慮した拠点つくりが必要である。今こそ、他都市に先駆けて「九州総合防災センター」を熊本に立ち上げようではないか。さらに、医と農そして観光が一体となった施設が、天草、阿蘇に在ることを願っている。そこにアジア各国から熊本ブランドを求めて集まることを私は夢見ている。熊本を愛するゆえの戯言をご容赦願いたい。
2010年4月号掲載
熊本保健科学大学 学長
小野 友道
山口県出身。昭和41年、熊本大学医学部卒業。
43年同大医学部助手、54年医学部皮膚科助教授、平成3年同教授、14年医学部長、16年副学長。
18年11月、熊本大学名誉教授、熊本保健科学大学副学長、19年4月、熊本保健科学大学学長就任。
専門は皮膚科学、皮膚腫瘍学。
14年の著書『人の魂は皮膚にあるのか』で熊日出版文化賞。
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