一般社団法人 熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

自給率向上・地産地消を皆様とともに

とあるスーパーで、ネット入りと一球のニンニクを見比べていた老婦人が、しばしの思案の後「やっぱり国産にしよう。」とニンニク一球をかごに入れられました。


様々な調査等でも8 ~ 9割以上の人が県(国)産農林水産品をできるだけ買うようにしていると答えていますが、「価格差がどの程度までなら国産優先か」と問われると多くの人が「2 ~ 3割まで」と回答しています。厳しい経済状況の中、財布を預かる立場としては当然ともいえる反応です。


食料自給率が向上した例として英国が挙げられます(1970年→1999年:英国46%→78%、日本60%→40%)。向上の原因に、①2度の世界大戦で深刻な食料不足に陥った経験から国民の間に「食料は国内生産で賄うことが重要」との認識が醸成され、それに基づいた施策が推進されたこと、②気候風土の中で育まれた食生活に著しい変化がなく、自給率の低い小麦や畜産物を多食するなど食生活が大きく変化し、気候風土に適した米の消費が大きく減少した我が国(1人当たり米の消費量120kg→60kg)の場合と異なること、等が挙げられます。


新政権でも食料自給率の政策目標を当面50%に引き上げるとしていますが、これも世界人口急増や新興国の経済発展・温暖化等による食料生産、供給の停滞や先の原油高騰、食料価格急騰時に見られるように、食料の輸入が困難な時期の到来が予想されることに伴う食料安全保障上の措置です。


現在熊本県では、蒲島知事就任直後の「食料・飼料を大量に輸入する一方で、耕作放棄地が拡大していることは政策のミスマッチ」との意向を受け、耕作放棄地の解消や休耕田等での非主食用米(米粉や飼料米)作付けへの助成を開始し、昨秋からは小中学校給食への米粉パン導入を支援しています。


それでも、16万人の児童生徒が週1回で6トン、30週で180トン、これは36haの米の生産量です。県民が1日1杯多くご飯を食べると75g×365日で27kg、熊本県で5万トン弱(現在の米生産量の2割強)、全国で約340万トン(同約4割)、これが実現すると食料自給改善にも大きく貢献します。


最近の医学界では、今世界で最も理想的な健康食は、「和食-(マイナス)塩分」つまり薄味の和食が最高の食事と言われています。皆さんも今一度地産地消、食料自給について考えてください。例えば、以下のことから取り組んでみませんか。


①食材生産者は、消費者が安心して食材を購入できるように、美味しくて安心安全な食材を生産する。


②スーパーやレストランなどの流通業者は、地元の新鮮な食材を利用し何処で採れたものか、誰が作ったものか消費者にアピールする。


③食品加工業者はできる限り県産・国産の食材を利用し、安全な加工食品を生産する。


④消費者は、和食の良さを再認識し、ご飯を中心としたバランスの良い献立づくりを心がける。また身近なところで採れる国内の食材に目を向け、旬の新鮮な食材を生活に多く利用する。


昨年3月、くまもと地産地消推進県民条例が制定されました。今、県内では魚介類、酪畜産物まで含めた農産物直売所が活況を呈しており、県で指定する地産地消協力店も477店舗に上っています。


中小企業家同友会の皆様には、今後も引き続き、農林水産業の多面的機能を発揮し、県土保全にも資する地産地消の取組みについて、ご理解とご支援をお願いします。


2010年2月号掲載

熊本県農林水産部 部長
廣田 大作

昭和26年1月7日生、鹿児島大学法文学部卒業、49年4月熊本県入庁(熊本県事務吏員)、平成11年4月人事委員会事務局公務員課長、12年10月企画開発部文化企画課長、14年4月健康福祉部高齢保健福祉課長、15年4月健康福祉部次長、17年4月八代地域振興局長、19年4月農林水産部次長、20年4月農林水産部総括審議員兼農林水産部次長、20年4月農林水産部長

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