各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
基本に忠実に 時として大胆に
◆地域(コミュニティ)とともに◆
(株)熊本シティエフエム(FM791)は、1996年(平成8年)4月、熊本市を放送エリアとして開局したコミュニティ FM局です。基本理念「地域密着」「住民参加」「防災及び災害時の放送」は、コミュニティ局ならではのもの、と自負しております。
コミュニティ局は、一定の市町村等をエリアとする放送局で現在、約280局を数えております。メディア業界の最後発であるが故に、経営環境は厳しく、FM791の場合も、生き残り策として、さまざまな試みをしてまいりました。その中から、わずかな成功例として、全国でも稀な“ラジオ局が発行する小学生のための新聞”「FM791子ども新聞」発刊の経緯を物語風に紹介させていただき、最後に整理分析を試みます。
◆ラジオ局が小学生新聞を発行◆
FM791子ども新聞は、平成15年11月に創刊しました。当時、教育現場では、ゆとり教育を基本とする総合的な学習が導入され、教科書のない、各校(クラス)独自の取り組みが注目を集めていました。FM791では、その模様を毎週、番組として放送しておりました。熊本市教育委員会との協議の中で、子どもたちの発表の場をもっと増やしたい、という意見を聞き、時間をかけた検討の中で、番組制作や改編の他に、紙媒体(新聞)案が浮上してきました。
我が社としては、本業のラジオはもとより、さまざまなイベント、販促ツールの制作・配布など試行錯誤を繰り返し、新たな収入源の確保を模索していた時です。ラジオとのメディアミックスが自前でできれば―と夢に近い青写真を描いていたものです。それだけに、小学生に特化した新聞の発行案は、極めて魅力的なものに映りました。本格的な新聞発行は初めてのことで、課題は多い。だが、記事部分で教育現場に貢献できる、社会的な意義がある、となれば、張り切りようも違ってきます。
市教委の取材協力を得てFM791が新聞製作に責任を持つ、新聞には広告の掲載を認め広告収入の中から発行経費をまかなう、児童への配布は各校で担当していただく、との合意の下に、FM791子ども新聞が産声を上げました。
◆広告収入の大きな柱に成長◆
発行の経緯など説明し了解を得てやっと取材させてもらえる、というのが常でしたが、「知ってる、読んでる」という児童たちの声も、先生方の評価も次第に多くなり、積極的に取材依頼や、紹介をいただけるようになりました。
掲載広告には慎重な配慮を、という要望と申し合わせもあり、営業部のスポンサー開拓には、苦労も多かったようです。それでも出稿社には好感され、長年のお付き合いをいただいている事業所なども数多くあります。子ども新聞は、社内では大きく成長し、会社を支える立派な柱になり、小学校では身近に親しまれる話題作りに、なっているのです。
無我夢中だった10年前を振り返って考えますと、以下の分析が可能かと思われます。
①切羽詰まった状況 ……… 必要は発明の母、と言います
②本業の意義を客観視 … 何をすべきか、どうあるべきか
③本業を拡大解釈 ………… 可能性と意外性、ニーズは?
④地道な検討を重ねた ……… 具体的に捉え粘り強く継続
⑤とにかく動いた………………体も頭も。やればできる
基本に忠実に、だが、時として大胆に-矛盾した言葉ですが、発想の転換とは案外、身近な、見過ごしがちなところ(もの)にもあるようですね。
2014年2月号掲載
(株)熊本シティエフエム 取締役
大園 光
昭和21年8月生まれ。
鹿本郡植木町(現熊本市北区)出身。45年熊本大学卒業、同時に熊本日日新聞社入社。編集局社会部長、八代支社長など経て、熊本日日新聞社情報文化センター(当時)社長。この間熊本シティエフエム出向。平成19年熊日退職後、同年から6年間、熊本県立大学非常勤講師(一部期間特任教授)熊本大学でも3年間非常勤講師。20年から現職
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