一般社団法人 熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

連携で男女共同参画の推進を

昨年来、安倍首相は、「女性の活用が成長戦略の中核」と声高らかに宣言している。平成11年、「我が国においては、日本国憲法に個人の尊重と法の下の平等がうたわれ、男女平等の実現に向けた様々な取組が、国際社会における取組と連動しつつ、着実に進められてきたが、なお一層の努力が必要」として、男女共同参画社会基本法が制定され、国や自治体、事業所等広範に男女共同参画が推進されてきた。特に女性研究者比率は欧米の先進諸国と比べ著しく低い水準にあるため、文部科学省による大学等への女性研究者支援事業が平成18年に開始された。私が大学生活を送った約40年前、女子学生の大学院進学を疎まれたり、製薬企業の女子学生採用が自宅通勤者に限られたり、多くの企業で女性の結婚退職制があった時代からすると隔世の感がある。


本学での男女共同参画推進の組織的な取組は、平成17年、第1期「次世代育成支援行動計画(期間5年)の策定に始まる。平成18年、前述の文部科学省「女性研究者支援モデル育成」事業(~ 20年度)に採択され、取組が本格化した。同年、複数の理事、部局等の選出教員、学外有識者等で構成し、基本方針策定を担当する男女共同推進委員会と担当理事、コーディネータ、事務管理職等で構成し、施策実施を担当する男女共同参画推進室を設置し、男女共同参画の講演会や女性研究者交流会、育児や介護に追われる研究者支援のための研究補助者雇用事業等を開始した。平成19年には男女共同参画推進基本計画(期間10年)を策定、翌年病児保育事業を開始した。平成21年には小学生までの子育て支援の短時間勤務制度を開始、病院内事業であった「こばと保育園」の大学直営化、新園舎の建設等の取組を次々展開した。


平成22年には、理工学系の女性研究者育成が急務のため、「女性研究者養成システム改革加速」事業の採択を受け、5年間で13名の女性教員採用の計画を実施している(~26年度)。昨年には、「女性研究者研究活動支援事業(拠点型)」に採択され、大学コンソーシアム熊本と連携し、県内大学・企業などにこれまでの取組を普及する事業(~27年度)を行っている。女子中高生の理系進路選択支援や女子大学生のキャリア意識形成に関わるプログラムも実施している。


これらの取組で、女性教員の数はこの10年間で約1.5倍の149名(比率は16%)に、教授職は4倍の32名に、女性事務職員比率も25%から35%に増加、大学執行部への女性教員の参画や事務職員の女性管理職の比率も徐々に増加、昨年2月には子育てサポート企業として認定され「くるみんマーク」も取得した。本学は、これまでに文部科学省が実施した3種の女性研究者支援事業の全てに選定された全国でも数少ない大学として注目されている。


今後さらに、大学院博士課程の女性比率に合う理系の女性研究者の採用(30%)、女性の上位職、管理職を増やすことが求められる。通常、大学教員・研究者の採用は1名ずつ募集され、最も相応しい候補者が採用され、女性採用比率が考慮されることはない。また、子育て支援制度はあっても十分に利用されていない現状もある。男性の働き方が変わり、性別による固定的な役割分担意識の改革、家事・育児の協働化が進むことが望まれる。これを機会に、貴会の女性経営者部会“くまもとソレイユ”の活動を学ばせていただくとともに連携をさせていただくことにより、男女共同参画を一段と推進したいと願っている。



2014年6月号掲載

国立大学法人 熊本大学 男女共同参画推進室 山縣 ゆり子

国立大学法人 熊本大学
男女共同参画推進室
山縣 ゆり子

兵庫県出身、昭和50年大阪大学薬学部卒業。55年同大学院博士課程修了。
61年大阪大学薬学部助手、助教授を経て、平成13年熊本大学大学院薬学研究科教授。23年薬学教育部副教育部長を経て25年副学長(男女共同参画担当)。専門は薬学物理化学、構造生物学

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