各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
「働き方改革」を進めよう
熊本県内の有効求人倍率は、昨年8月に1倍を超えて以降8 ヵ月連続して1倍台で推移しています。これは、平成3年以来23年ぶりの高い水準です。
地域によっては、また、希望する職種によっては求職者にとって厳しい状況も見られますが、一方、求人側から見ますと、有効求人倍率の上昇に伴い人手不足感も生じています。以前から人手不足が指摘されている建設業、介護、看護などだけでなく、運輸業、飲食サービス業、製造業などにおいても人手不足感が生じています。
今年3月に高校を卒業した新規学卒者の求人数も、前年に比べ2割近く増加しました。3月に高校を卒業した新規学卒者の求人・内定の状況を見ますと、求人数はほとんどの業種・職種で前年に比べ増加しているのですが、内定者数は、人気の高い製造業や事務的職種で前年に比べ大幅に増加している一方、建設業、宿泊・飲食サービス業、医療・福祉では減少しています。希望者の多い業種・職種での就業が進む一方、希望者の少ない業種・職種では採用が困難になっている状況です。高校新規学卒者以外でも同じような傾向が見られます。
人手不足が著しい建設業、介護などの業種で、就職を希望しない理由あるいは離職してしまう理由を調べてみますと、賃金水準の問題のほかに、労働時間が長いこと、休日が少ないこと、仕事の進め方、人間関係など雇用管理上の課題が挙げられます。
少子高齢化が進展する中で、女性や高齢者に活躍していただくためにも、長時間労働などを前提とする雇用管理を見直す「働き方改革」を進めることが必要になっています。所定外労働時間の削減、年次有給休暇の取得促進、短時間勤務、就業時間のシフトなど、柔軟で多様な働き方ができるようにすることがポイントになると思います。従業員の意見を聞きながら、きめ細かな対策を進めることが大切です。例えば、政府は、働き方改革の一環として、個人のライフスタイルに応じた働き方の実現に向けて、明るい時間が長い夏の間は、朝早くから働き始め、夕方には家族などと過ごせるよう、夏の生活スタイルを変革する新たな国民運動である「夏の生活スタイル変革(ゆう活)」を呼びかけています。
働き方改革を推進することは、人材確保、女性の活躍推進、健康の確保、ワークライフバランスの実現だけでなく、生産性の向上や地方創生にもつながります。
労働局では、今年1月に「熊本労働局働き方改革推進本部」を設置し、団体・企業のトップへの働きかけ、気運の醸成を図っているところです。私も、いくつかの企業や団体を訪問させていただきましたが、企業からは、既に、長時間労働の削減などに向けて、人事制度改革、仕事の標準化、多能工化などを進めている状況を聞くことができました。「求人難の状態が出始めてきており、処遇の改善とコストの問題に適正に対処できた企業だけが生き残れる。」といった問題意識を持って取組んでいる企業もありました。
企業づくり、人づくり、地域づくりに取組んでこられた中小企業家同友会会員の皆様は、これまでも「働き方改革」を進めてこられたのかもしれません。今こそ活動の成果を発揮していただく時であると御期待しております。
2015年6月号掲載
厚生労働省 熊本労働局長
一瀬 壽幸
昭和32年生まれ。山梨県出身。山梨大学工学部卒。昭和55年労働省入省。厚生労働省安全衛生部国際室長、中央職業能力開発協会能力評価部長、中央労働災害防止協会中央快適職場推進センター所長、厚生労働省安全衛生部安全課安全対策指導業務分析官を経て、平成26年4月熊本労働局長(現在)
最新の特集記事
持続的な自主自立の
まちづくりに向けて
熊本市西区長 石坂 強
本年4月より、熊本市西区長に就任いたしました石坂と申します。 貴会をはじめ会員の皆様方には、日頃から西区のまちづくりへ...
社会変化に伴う
行政書士の目線
熊本県行政書士会会長 櫻田 直己
この度「会員中小企業家に向けての提言」というテーマで執筆させていただくにあたり、私達行政書士について説明いたします。 ...
助成金を活用した
賃上げのすすめ
厚生労働省 熊本労働局 局長 金成 真一
人手不足が進む中、「賃上げ」や「省人化投資」を考えている企業の方は多いと思います。 人口を年齢階級別に見れば、若年者は高...