各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
熊本大学の地域戦略
現在、日本は少子化による人口減少、膨大な財政赤字、社会保障制度の破綻の可能性など深刻な国家的課題を抱え込んでいます。将来の社会がどうなるのか不安を抱きながら、現実には、格差社会(世代間格差や地域格差など)が進み社会が急速に弱体化しているのを感じているのは、私だけではないでしょう。これらの問題あるいは問題解決をもろに被らされているのが、今の大学運営であると言っても過言ではありません。ここで今後の大学及び産学官の運営方針として重要だと思われる一般的提言を挙げてみたいと思います。
- 1)基礎科学分野の人材育成を強化する。産官学で科学技術力を結集して生産力を高める。誰でもイノベーションを起こす“ユビキタス・イノベーション”に企業風土を転換する。
- 2)国際競争に打ち勝つ産官学の体制を整備し、国際的に整合した知的財産権制度を確立する。
- 3)課題先進国として医療・福祉・介護問題を解決したモデルケースとして大学は貢献する。
- 4)大学は理系、文系などの二分法から脱却し、意欲あるすべての大学生が外国に留学する。
- 5)生涯にわたって複数の学位取得が可能な社会人向け大学・大学院教育を充実する。
これらの提言は大学の将来像をどういう方向にもっていくかという点でも大変参考になります。
現在日本が抱えている大きな問題の一つに、前述したように「少子高齢化」があります。これは日本の経済だけではなく、医療などにも大きな影を落としています。特に人口減少を伴った地方の衰退を如何に防ぐかは熊本でも大きな課題となっています。地域に産業を起こし、また大学を活性化させ、多くの若者を引きつけるという意味では、地域の総合大学である熊本大学の存在と役割は非常に大きいと思います。その意味で、熊本大学は地域に根ざしたものであります。
このような背景の下、熊本大学は「研究大学強化促進事業」(平成25年度採択)「地(知)の拠点整備事業(COC)」(平成26年度採択)「スーパーグローバル大学創成支援事業(SGU)」(平成26年度採択)の三つの事業に採択されました。これらの事業では、それぞれ、熊本大学が研究拠点大学として、地域に貢献する大学として、また国際的に開かれた大学として、どう 大学を変えて行くか、どのような人材を育成していくかが問われています。
このように熊本大学は地域再生・活性化の核となる大学としてCOC事業「活力ある地域社会を共に創る火の国人材育成」を推進していますが、熊本からの転出超過を抑制し、同時に熊本県内の産業を劇的に活性化するためには、さらに熊本の産業創成・雇用創出に繋がる取り組みが必要となってきます。熊本大学では「くまもと地方産業創生センター」を設置し、熊本の主に製造業の活性化、人材育成、雇用促進を図っていきたいと思っています。具体的には熊本県内の大学、企業、関連業界団体及び熊本県との連携の下、熊本県内の製造業を中心とした産業創生事業を行います。その活性化を図りながら、学生に対し熊本の文化、歴史、産業、農業及びこれらに関連した産業に関する基礎知識を授ける教育と地方創生に必要な基本的能力を育成する教育、実践教育並びに地方創生プログラムからなる地方創生教育プログラムを提供する予定です。将来的には、このようなプログラムを社会人にも提供できればと考えています。
2015年8月号掲載
熊本大学 学長
原田 信志
昭和25年2月3日生まれ、熊本市出身。昭和56年熊本大学大学院医学研究科(博士課程)修了、昭和59年山口大学医学部助手、昭和61年京都大学ウイルス研究所助教授、平成元年熊本大学医学部教授、平成18年熊本大学大学院医学薬学研究部研究部長、平成23年国立大学法人熊本大学理事副学長(研究・社会貢献担当)、平成27年国立大学法人熊本大学長に就任。専門はウイルス学
最新の特集記事
持続的な自主自立の
まちづくりに向けて
熊本市西区長 石坂 強
本年4月より、熊本市西区長に就任いたしました石坂と申します。 貴会をはじめ会員の皆様方には、日頃から西区のまちづくりへ...
社会変化に伴う
行政書士の目線
熊本県行政書士会会長 櫻田 直己
この度「会員中小企業家に向けての提言」というテーマで執筆させていただくにあたり、私達行政書士について説明いたします。 ...
助成金を活用した
賃上げのすすめ
厚生労働省 熊本労働局 局長 金成 真一
人手不足が進む中、「賃上げ」や「省人化投資」を考えている企業の方は多いと思います。 人口を年齢階級別に見れば、若年者は高...