各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
大学と自治体の連携事業に企業も参画を
尚絅大学は、文化言語学部が本年6月に菊池郡大津町議会広報編集特別委員会と連携協力に関する協定を結びました。これに続いて、尚絅大学及び尚絅大学短期大学部が、菊陽町と、さらに合志市と連携協力に関する包括協定を締結しました。
大津町に関しては、『大津町 議会だより』(年4回)の記事執筆および編集サポートが連携協力の主たる内容となります。直接のきっかけは、サービスラーニングクラブという学生のサークルが、第71号にインタビュー記事を、第72号に傍聴レポートを書かせていただいたことにありますが、大津町と文化言語学部とのこれまでのさまざまな分野での関わりも背景にあります。地域の地蔵祭、絵本マルシェの企画・運営をサポートしてきました。これらはもちろん学生にとって貴重な学修の機会です。
一方、菊陽町、合志市とは、本学が今年度新たに設置した尚絅地域連携推進センターを窓口に協議を進めて参りました。人材育成、まちづくり等様々の分野にわたる包括的な協定ですが、まずは私どもの得意分野というべき子育て研究、食育研究を軸に推進していくこととしております。本学には尚絅子育て研究センター、尚絅食育研究センター、尚絅ボランティア支援センターが設置されており、これらのセンターの教員たちも加わって、今後の連携の具体的な方法や課題について、それぞれに協議が進められています。
自治体と大学の連携は、単に大学が保有する専門的知識と技法を提供し、問題解決を支援するだけでなく、大学もまた地域社会からの課題を受け止め、研究を広げ深めていくことが必要です。また、大学としてはこれを教育に活かさなければなりません。すなわち、連携事業によって得られた成果を教室で学生に伝えるにとどまることなく、事業に学生を参加させたいと考えています。現場での体験は学修の動機付けになり、教育全体を活性化させます。
私の述べたいことはこの先にあります。このような大学と自治体の連携事業に民間の事業者の参加が期待されるということです。
大学と自治体の連携によって、子育てや健康に関するアイデアが提示され、双方の知見に基づき点検され、施策が策定されることになりましょう。その時、政策が効果を発揮するためには、あるいは効果的な政策とするためには、地域の企業の理解と協力が必要です。たとえば、待機児童を解消するための保育施設の整備と運用に関して、児童の両親の要望を汲み上げることはもちろんのこと、母親の職場復帰や採用に直接かかわる雇用者側からも有用な提言が期待できるでしょう。企業としては、このようにして協働して練りあげた施策をすぐれた人材の確保につなげることができます。
たとえばまた、地域の特産品を活かした食品の開発研究に関しては、それを商品化する技術、生産する設備、販売ルートの開拓など、大学と行政だけでは手の及ばないところが少なからずあります。
地元企業の参画が欠かせないゆえんです。もちろん大学と自治体はそれを可能にする仕組みを構築しなければなりませんが、企業の方々にも、アンテナを高くして大学と自治体の連携の動向に注意を向けていただきたいと願っています。
2015年10月号掲載
尚絅大学・尚絅大学短期大学部 学長
森 正人
昭和23年9月、鹿児島県に生まれる。熊本大学法文学部卒業、東京大学大学院人文科学研究科国語国文学専門課程博士課程中途退学。専門は日本文学。愛知県立大学講師・助教授、熊本大学文学部助教授・教授、同大学院社会文化科学研究科教授を務め、平成26年3月定年退職。同年4月名誉教授。平成27年4月より現職
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