一般社団法人 熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

次世代への安心の橋渡し

平成28年の新春を迎えてからはや一月となりましたが、熊本県中小企業家同友会の皆様には益々ご清栄のこととお慶びを申し上げます。


本年は早々から第190回通常国会が開会されており、平成27年度補正予算及びこれに続いて平成28年度予算が審議されることになります。


平成18年から上昇傾向にあった合計特殊出生率は平成26年に1.42となり、9年ぶりに低下に転じました。年間出生数も100万3,539人で過去最低となっています。一方では、団塊の世代の全員が前期高齢者である65歳を超え、10年後には75歳以上の後期高齢者になります。2035年にはベビーブーム世代が65歳を迎え、2040年頃までは急激に高齢化が進むこととなります。


こうして高齢化率は少子化と相まって継続的に上昇し、平均年齢も上昇し続けますが、これは生産年齢人口の割合が引続き減少し続けることを意味し、財政という観点からみると、所得税や保険料収入の原資となる雇用者報酬の減少という、歳入面での財政圧迫要因が指摘され得るものです。


これまでも急激な高齢化の進展等にともなって、 我が国では社会保障給付費が大きく伸びてきましたが、これを負担すべき社会保険料収入は近年横ばいで推移し、その差額は拡大傾向にあります。この差額は主に国や地方自治体の負担で賄われていますが、国の負担は毎年1兆円規模で増えてきており、その多くが借金である公債金により賄われ、これが財政赤字の大きな要因となっています。更に、今後特に医療・介護分野の給付がGDPの伸びを大きく上回って増加していくとみられることを踏まえると、団塊の世代が75歳以上となる前の2020年代初めまでに、受益と負担の均衡が取れた社会保障制度を構築していく必要があります。


ところで、急激な少子高齢化が進んでいながら、我が国の国民負担率は、諸外国と比べて低く、受益と負担のバランスが取れていないと考えられます。


こうした負担を将来世代に先送りすることを避けるため、消費税率引上げを含めた社会保障と税の一体改革を行うこととしているのです。社会保険料のみで費用を負担することは、働く世代に負担が集中する面もあります。こうした中で、国民が広く受益する社保障の費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合い、安定した財源を確保する観点から、消費税率引上げによる増収分を含む消費税収(現行の地方消費税収を除く)は、全て社会保障財源として活用されることになります。


同時に、社会保障制度改革により、社会保障の充実・安定化も図ることとしています。具体的には、子ども・子育て、医療・介護、年金といった社会保障4経費について、消費税10%引上げ後で2.8兆円規模の充実を行うこととしています。


こうして社会保障の充実・安定化と財政健全化の同時達成が図られることになります。


政府は、持続的成長と財政健全化の双方の実現に取り組み、①2015年度までに2010年度に比べ国・地方の基礎的財政収支(PB)赤字の対GDP比を半減、②2020年度までにPB黒字化、③その後の債務残高対GDP比の安定的な引下げ、という財政健全化目標の達成を目指しています。


平成28年度予算はこのような目標に向けた第1歩としての予算でもあります。国会での予算審議はこれから本格化すると思われますが、あらゆる機会に社会保障・税一体改革に対する理解が深まることを期待しています。


2016年2月号掲載

財務省九州財務局長 辻 秀夫

財務省九州財務局長
辻 秀夫

昭和35年(1960年)生まれ。東京大学卒業後、防衛庁(現防衛省)に入庁。経理装備局航空機課長、技術研究本部技術企画部長、防衛大学校総務部長、近畿中部防衛局次長、東海防衛支局長を歴任。現在は、財務省九州財務局長

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