各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
若者の育成で連携する企業と高校、大学
昨年4月に起きた熊本地震は、私たちに様ざまなものをもたらしました。建物や道路などの甚大な物的被害はもちろんのこと、目に見えない被害、つまり日常生活が変わってしまったことによる大きな苦しみや傷を人々の心に残しました。しかし一方で、それまで気づかなかった人と人の支え合う力、繋がり合う力の強さや大切さをあらためて認識させられる機会ともなりました。このように人間関係は、私たちが生きる上で欠かせないものでありますが、時に学校、職場、家庭において人と人を分断させる側面をも合わせ持っています。また世界に目を向けると、グローバル化が進む一方で不寛容で排他的な傾向が強まり、多様性を認めない発言が続くなど、世界は分断化の方向へ進んでいるかのようにも見えます。
しかし人間は元々それぞれに「違い」を持つ存在です。このような私たちが共に生きる時に「ぶつかり合い」が起こるのは自然なことです。そしてこの「ぶつかり合い」は避けるべきことではなく、むしろ互いの理解につながるチャンスでもあります。ただ、「違い」をもつ者同士が理解し合うには時間がかかります。しかしその時間は、自分の価値観だけでは見えなかったことに気づき、物事を様ざまな視点から考えることができるようになるために必要なプロセスなのです。人間関係の難しさを、ただ厄介な問題、トラブルとして捉えるだけであるならば、真の理解や解決は生まれないでしょう。ぶつかり合いを避け同質性(同じであること)を求める傾向の強い日本において、異文化圏の人びとと一緒に働く機会が増えるこれから、この問題は特に重要になってくるのではないでしょうか。もちろん、このことは異文化圏の人との関係に限らず、年齢や性別、障がいなどさまざまな違いをもつ多様な人材が共に働くすべての職場においても同様です。
大学は今、2020年の入試改革に向けて、高校とのスムーズな接続(高大接続)を目ざす教育改革が求められています。今後はさらに大学から社会への接続(高大社接続)が重要な課題となってくると思われます。これまでは高校、大学、社会での学びが分断され、人材育成に繋がらない状況がありました。接続とは、単に大学入試や企業の採用試験のことだけでなく、将来を担う若者の資質・能力の何をどのように育成していくかについて、高校、大学、企業が連携していくことを意味しています。
九州ルーテル学院大学は、英語(人文学科キャリア・イングリッシュ専攻)、教育・保育(人文学科こども専攻)、心理(心理臨床学科および大学院人文学研究科障害心理学専攻)の3つの専門分野をもつ大学です。学生たちはそれぞれの分野について専門的知識や実践力を身につけ、免許・資格を取得して卒業し、企業へ、また幼稚園、保育所、小学校、中学校、特別支援学校、病院などへと就職していきますが、本学が学生に望むことは、学生時代にボランティア活動や異文化圏体験学修、海外留学などをとおして多様な人びとと出会い、自分と異なる世界への扉を開いてほしいということです。特に人間関係に対して苦手意識をもつ若者が増えている今、違いによるぶつかり合いを恐れず、時間をかけて理解し合うことを経験をとおして学んでほしい。そして多様性をむしろ楽しむことのできる社会人として活躍してほしいと願います。
2017年4月号掲載
九州ルーテル学院大学
学長
広渡 純子
1949(昭和24)年生まれ。佐賀県小城市出身。同志社女子大学学芸学部英文学科卒、聖和大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)。幼稚園教諭を経て、1984年より聖和短期大学(兵庫県)で保育者養成に携わる。2009年4月より2015年3月まで同大学学長を務め、2016年4月九州ルーテル学院大学学長に就任。専門は幼児教育・保育
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