各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
同友会と弁護士と多様性
平成23年に熊本県中小企業家同友会に入会し、約12年になります。
当時、入会している弁護士も少なく、どのような関係性を築けるのか心配していたものですが、実際に例会に数回参加すると全くの杞憂でした。会員として受け入れてくれるばかりか、先輩会員から弁護士の価値を経営者としていかに評価しているのか伝えられ、多くの気付きと自信を与えてもらったことに感激しました。
現在では、熊本県中小企業家同友会に19名の弁護士が在籍しています。
エコーチェンバー現象という言葉を耳にすることがあります。
同じ意見の者同士でコミュニケーションを繰り返し、特定の意見が強化されてしまい、他の意見に排他的な傾向になるといった現象を指します。
インターネットや大きな組織など、多様性に富む環境においては、一見多様性をもった集団が生まれると思われる反面、実際にはむしろ同じ思想を持つ排他的で画一的な集団が点在して生まれるという皮肉な傾向にあるようです。
熊本県中小企業家同友会に入会した際、仮に排他的な組織であれば、こうして長く在籍することも難しかったことでしょう。多様性のある会員が集まり、身近なところで意見を聞ける、また協力し成功を喜び合える経営者が存在する環境に大きな意義を感じています。
支部などの組織運営面でも、他の会員の事業を知り、人柄を知り、失敗も知り、信頼関係が醸成されていき、多様性がある中で組織としての合意が形成されていく経験は得難いものです。
法律の世界に目を向ければ、異なる意見を受け入れることなく、対立が深くなって紛争に至っている事例を日々目にします。いくらかでも他の意見に耳を傾け、コミュニケーションができていれば、紛争が生じなかったであろう例は多数あるでしょう。
また、経営の場面でも、強力なリーダーシップで会社を引っ張ることは重要である一方、ともすれば異なる意見の排除につながることもあります。いつのまにか経営者の周りにはイエスマンしかいなくなって多様性が失われていたという話もよく耳にします。
経営者の集まりである中小企業家同友会と、法律の専門家である弁護士会とは、それぞれ活動領域は異なるものの、それぞれが違う団体であるからこそ多様性があり、交流により気付きが多くなるように感じています。
支部例会でも、弁護士も参加し、法律を通じて交流することをテーマにしたものも開催されています。
新型コロナウイルス感染症で失われたコミュニケーションを取り戻し、様々な交流をすることで多様性を深め、よい経営環境の実現に努めていきたいと思います。
2023年4・5月号掲載

熊本県弁護士会
会長渡辺 裕介
平成13年3月東京大学法学部卒業
平成14年10月弁護士登録
平成25年5月熊本県弁護士協同組合 青年部会会長
平成27年4月熊本県弁護士会副会長
令和 5年4月熊本県弁護士会会長
令和 5年5月中小企業診断士
(登録予定)
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