各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
助成金を活用した
賃上げのすすめ
人手不足が進む中、「賃上げ」や「省人化投資」を考えている企業の方は多いと思います。
人口を年齢階級別に見れば、若年者は高齢者よりも少ない。それでも雇用者数は、女性と高齢者の活用により増加していましたが、近年頭打ちの傾向にあります。
加えて、働き方改革による残業規制が2019年から始まりました。建設業や自動車運転の業務等は、同時期からの対応が困難だったことから猶予期間がありましたが、2024年4月から規制が開始。人手不足の一因とも言われています。
最近の物価上昇により、労働者は賃金をより重視するようになりました。人手不足の中、労働者を採用・定着させるためには、「賃上げ」は必須な状況にあります。
国が定める「最低賃金」も同じ状況です。毎年7月下旬に中央最低賃金審議会で引上げ額の目安が示されますが、今年は、「消費者物価の上昇が続いていることから労働者の生計費を重視した」として引上げ額の目安は過去最大の50円(5.0%)とされました。
その後、熊本地方最低賃金審議会における審議を経て、熊本県の最低賃金は、10月5日から898円から952円に改定される予定です。事業場内の最低賃金が952円を下回っている場合は、同日までに賃金額を改定していただく必要がありますが、その際に中小企業が利用できる助成金があります。
「業務改善助成金」と言い、事業場内の最低賃金を30円以上引き上げ、生産性向上に資する設備投資等を行った場合、その設備投資等にかかった費用の一部(助成率:75~90%、助成上限額:30~600万円)を助成します(助成率・助成上限額は、引上げ前の賃金額、賃金の引上げ額、引上げ労働者数、事業場規模等により決まります。)。
また、最低賃金が引き上げられると、年収の壁を気にして就業調整をする方がいるので、人手不足が強まるとの声もありますが、労働者の年収が106万円を超えて社会保険を適用させる際に、企業が労働者本人負担分の保険料相当額を手当等として支給する場合、1人当たり最大50万円を助成する「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」があります。
物価上昇の要因として、エネルギーや食料品などの国際的な原材料価格の上昇や、円安による輸入価格の上昇があり、今後も続くと見られることから、物価上昇は今後も続くと考えられています。物価上昇が続けば、来年以降の最低賃金の引上げ額も大幅になることが予想されます。
厚生労働省では、「賃金引き上げ特設ページ」を開設し、先ほどの助成金など賃金引き上げに関する支援情報を提供しています。毎年10月に最低賃金が改正され、それに対応する必要があることを前提に、賃上げや省人化投資のための助成金の活用を検討してはいかがでしょうか。
2024年9月号掲載
厚生労働省 熊本労働局 局長金成 真一
1967年生まれ、福島県出身。91年京都大学法学部卒業、同年労働省(現厚生労働省)入省。14年中央労働委員会事務局調整第三課長、15年同局調整第一課長、17年同局第一部会担当審査総括室長、18年長崎労働局長、20年中央労働災害防止協会コンプライアンス室長、同年公益財団法人連合総合生活開発研究所主任研究員、22年東京労働局総務部長を経て、24年4月より現職。
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