各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
インフラクライシスに 対処するために
インフラクライシスとは、直訳するとインフラ(社会資本)クライシス(危機)であるが・・・。戦後復興(1946 ~)に始まり、高度成長期(1960 ~ 1970年代)に集中的に整備された日本の社会資本(道路、鉄道、空港、港湾、上水道、下水道、情報通信システム、文教施設、都市公共施設、公共住宅など)は、短期間に集中的に老朽化する。これらが、大規模・広範囲に使用不能に陥り、人命損失、経済活動の停止、生活困難、環境破壊などの危機的状況が発生することをいう。戦後70年、高度成長期から50年程度経つので、(法定)寿命が50年程度の社会資本は、一斉に寿命を迎えつつあるのである。その顕在化の例としては、笹子トンネル天井板の崩落(2012年、9名死亡)が記憶に新しいが、八戸市の水道管破損漏水(2009年、24万人に1週間断水)、下水道管渠老朽化による道路陥没は、2000 ~ 2004年に3万件生じているし、校舎等のコンクリート塊の落下による生徒・園児の負傷は1999年から報告されている。
具体的には、建設後50年以上経過する社会資本の割合は、道路橋や河川管理施設でみると5年後の2020年で、約25%、15年後の2030年には約50%以上となる。1991(平成3)年~ 2010(平成22)年の最近20年間における公共事業関係費(国費)は、198兆円(10兆円/年)であるから、今後、これらに相当する国費の大部分を老朽化対策に充当せねばならなくなるが、それができるのであろうか?
もう少し身近な例として白川にかかる橋を見てみると、昭和28(1953)年の大水害後に、架けた橋が多いので、軒並に橋齢50歳を超えている。
熊本県が管理する橋は、1200橋以上あるが、15年後にその半数が50歳以上になるし、熊本市管理の180橋程度についても同様である。これらを短期間に架け替える予算を用意するのは、ほとんど不可能である。
では、インフラクライシスを避けるためにはどうすればよいであろうか?
まず、第一には、予防保全型管理による橋梁等の長寿命化を実施し、建て替え時期をできるだけ後ろに倒して、必要費用を時系列的に平準化すること。
第二に、国、地方行政のこの種の予算の充実と確保、さらに、PFI、PPPなどによる民間資金の活用や民営化の促進による公財政負担の軽減。そして、第三に少子高齢化を見据えた都市の成長管理政策(スマートグロースやコンパクトシティの考えに基づく都市計画・社会資本整備)の実施などが考えられる。
いずれにしても、国民、県民、市民の皆様が、人間だけでなく、老齢化する社会資本にも税投入しなければならないことを理解していただくことが重要であり、このような環境を十分に認識したうえで、建設業を中心として同友会各社において、ピンチをチャンスにする展望と企画がなされることを期待したい。

2015年9月号掲載

熊本保健科学大学 学長
﨑元 達郎
鹿児島県出水市生まれ、昭和47年大阪大学大学院博士課程単位取得退学。47年同大助手、48年熊本大学工学部講師、54年米国オハイオ州立大学客員助教授、59年熊本大学工学部教授、平成14年同工学部長、同学長、平成16年国立大学法人熊本大学初代学長、21年熊本大学名誉教授、顧問、22年放送大学熊本学習センター所長、27年熊本保健科学大学学長、専門は、土木構造・橋梁工学
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