各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
事業承継
~公的支援の活用で円滑な取り組みを~
4月24日に開催された熊本県中小企業家同友会第37回定時総会におきまして、2018年度のスローガン「経営の話をしよう!」~蘇ろう熊本 われら1000名の絆で~が掲げられました。よりいっそう地域経済発展のために同友会の活動の方向性が力強く示されたものとして、深く敬意を表します。
その定時総会後の懇親会での会員の皆様との交流の中では、昨今関心が高まっている事業承継についての話題も多く、「自分はすでに承継を済ませた。後輩会員の相談に乗っている」、「まさに現在進行形であり、会員同士で議論している」など、同友会の皆様ならではの大変示唆に富むお話をお聞きすることができました。
そこで今回は、事業承継についての公的支援の役割についてご紹介するとともに、その活用をお勧めしたいと思います。
事業承継というと、個人資産の引き継ぎを伴うことが多いなど、個人の問題に深くかかわるイメージが強く、どちらかというと私的な行為と考えがちなことですが、そこになぜ公的な支援が必要なのでしょうか。大きな理由は2つです。
第一には、地域経済における損失の発生を防止するためです。事業が順調であるにもかかわらず、親族や従業員に後継者の候補がいないというだけで経営者の引退をきっかけとしてその企業が廃業することになれば、地域にとって大きな損失です。そのような事態を防ぐために、今年4月には事業承継税制の大幅な改正が行われておりますし、地方自治体においては、数年前より地域の実情に応じて組織する「事業引き継ぎ支援センター」などの公的機関による支援体制が構築されています。実際に、各地で公的支援による後継者確保やM&Aの成功事例も出ているところです。
第二の理由は、事業承継の前後に顕在化するリスクを回避するためです。例えば、経営者の交代に際して、取引先との信頼関係が揺らいでしまう、金融機関とのやり取りが円滑に行かなくなってしまう、など新しい経営者が外部からの評価に晒される局面を乗り切るには、やはり公的支援機関からのアドバイスに基づいて、事前にリスクを想定した上で対応策を練っておくことが必要と考えられます。
事業承継への公的支援は、地域経済を支えている各企業において、経営者の承継問題に伴って発生するリスクをカバーする役割を担っているのです。
現在、日本公庫では、事業承継の時期にある中小企業の経営者との対話を通じて事業承継を検討する必要性を共有するとともに、事業承継を検討されているお客様には、事業承継計画策定のサポートを行うなど、事業承継に関するお客様のニーズに応じた情報提供を実施しています。政府系金融機関として、これまでどおり安定した資金を供給するとともに、情報提供の面におきましても皆様方のお役に立てるよう努めて参る所存です。
末筆ではございますが、熊本県中小企業家同友会の皆様の今後ますますのご発展、会員の皆様方のご健勝とご多幸を祈念いたします。
2018年7月号掲載

(株)日本政策金融公庫熊本支店
中小企業事業統轄
金子 恭三
昭和39年長崎県生まれ。九州大学卒業後、昭和63年旧中小企業金融公庫(現日本政策金融公庫)へ入社。平成24年北九州支店総括課長、27年東大阪支店総括課長、28年横浜支店副事業統轄を経て、平成30年4月現職就任。
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