熊本県中小企業家同友会

特集

核心

経営課題への解決の糸口が、ここにある!

一筋の道を究めたい!~やっぱり、労使見解ですね~

司法書士・行政書士・土地家屋調査士 小屋松事務所 所長 小屋松 徹彦

司法書士・行政書士・土地家屋調査士 小屋松事務所 所長
小屋松 徹彦 (熊本同友会代表理事)


熊本同友会代表理事、小屋松事務所の小屋松徹彦所長に「労使見解」※の核心についてうかがった。

※中小企業における労使関係の見解。同友会の先達たちが10数年の経験を踏まえ1975年に確立。中同協発行『人を生かす経営』所収


-30年経っても学びを続けられる、同友会の魅力って何ですか?

「30年経ってもそんなものか」と言われそうで、恥ずかしいと言うのが率直な感想です。しかし30年経っても新鮮なのが『労使見解』ですね。今でも繰り返し読んでいます。ここに書いてあることを自分の職場で実践できているのか?と日々問いかけています。経営の根幹がここにあります。


-どの辺りが根幹ですか?

書籍『人を生かす経営』の8頁にある社員の自発性・創意性をいかにつくり出していくか、の所です。社員は大半の時間を職場で過ごします。そこで、彼らも成長しなければなりません。それがなければ、なんのために職場にいるのか?金を稼ぐためだけの場ではないと思います。皆が人間性を高めるとか、やりがいを見つけるとか、そういった場所が職場です。社員が自発性を発揮できるようにするのが経営者としてのやりがい、責任です。


-小屋松事務所では、社員の自発性・創意性をどうつくり出していますか?

以前は私が一方的に話すことが多く、これではいけないと思いました。社員が自分の言葉でしゃべらないことには、自発性は出て来ません。仕事だけでなく職場内の関わりについてもあまり結論を言わないようにしました。また社員の自発性が出るように委員会もつくりました。私が入らない委員会活動の中で皆が気づいてくれればと考えました。
 委員会活動の他に新聞も発行しています。最初は全部私がつくっていましたが、少しずつ任せるようにしました。結果、私は楽になりました。しかも私ひとりの時より立派なものができました。『転ばぬ先の杖』という新聞です。私は何でも自分でやってしまう性格なので、そこを抑えて言わないように、やらないように努めました。それでも動いてくれない時もありますが、ぐっと堪えて黙っておきます。


-いつ頃から実行していますか?

平成10年頃つくった経営指針をやめた経緯があります。そこを抜け出した平成17年頃、もう一度経営指針をつくり直そうとした時です。皆で一緒につくろうと考えました。


-平成10年頃つくられた経営指針をなぜやめられたのですか?

なにもかも自分でつくって、皆に押しつけていました。自分の都合のいいように皆を働かせるためにつくっていると感じました。嫌だなと思いました。自己嫌悪に陥って、経営指針はやめました。よかれと思ってとか、幸せを願ってとか、経営基盤を安定させようとか、皆で一緒につくっていこうとか、中身は今の経営指針と変わりませんが、動機が不純でした。だから浸透しませんでした。
 当時売上が厳しくて、私は給与は取らず、社員の給与は出していました。そんな折、ある社員が給与への不満を言って来ました。家まで行き奥さんにも状況を説明しました。その時奥さんから返ってきた言葉が『うちは給料さえ貰えれば、少しでも高く貰えればそれでいいです』でした。私が給与を貰わずに働いているのを知っているはずの社員がなんのフォローもしてくれませんでした。「これだけ苦労しているのに何も分かってもらえていない、この程度なのかな」と思いました。指針をつくって数年経過していたのになんにも浸透していないと落胆しました。
それから悶々と仕事をしました。私も仕事をし、社員も仕事をする。ただそれだけでそれ以上の関わりを持って、何かをつくり上げようとしなくなりました。コミュニケーションが減り、惰性で仕事をし、結果として数字は上がりません。


-再度つくられた「経営指針」は、最初の「経営指針書」と、どう違いましたか?

平成16年に、もう一回つくり直そうと決意しました。本物をつくりたいと思ったのです。自分の打算なしに、まっさらな気持ちでつくろうと思いました。形にこだわらない。きちっとした物でなくてもいい。周りの目を気にして経営指針書をつくっても意味がないと感じました。自分のペースで自分の身の丈でつくっていこうと決心したのです。稚拙なものができました。短いものでした。でも納得してつくったので満足しました。それは社員の考えを聞きながらつくったものだからです。


-新たな経営指針をつくられていかがですか?

私自身が楽になりました。自分がすべてを背負うのではなくなりました。社員は、言われなくとも大概のことはできます。黙っていると、自主的に動きます。以前は社員を信用していなかったのだと思うんです。信頼関係がつくれないと、いつまでたっても経営者はきつい、楽になりません。『ひとりで苦労されなくてもいいですよ』と言われていると感じます。「社員に任せればいいのだ」と思いました。


-「経営指針書」はなぜ必要ですか?

3種類の異なった資格を持った人たちを『一つにまとめる』ために経営指針書の必要性を再確認しました。お陰で、今は自信を持って3つの資格がうちの強みだと言えるようなりました。社員とも共有できつつあります。社員が自律していける会社にするのがこれからの私の仕事です。創意・工夫はまさにそのことです。社員たちでつくる。私個人の事務所ではない。私もここで仕事をさせてもらってお金を得ている一員なのです。皆の会社なのです。


-そのための会議はされていますか?

コミュニケーションが取れるように、広報委員会と職場風土改善委員会とホームページ委員会の3つがあります。3名ずつでチームをつくって活動しています。私は入りません。一番大きいのは、全員・全体のミーティングの会議、その前の準備会でそれぞれ司法書士の部門と土地家屋調査士の部門と行政書士の部門が会議をします。また資格者だけの役員会もあります。ココはもっぱら戦略的なことや業績の話をします。


-今の同友会をどう思われますか?

同友会も、活動内容が多種多彩になりました。会員数も増え、外部からの評価は変わってきていると感じます。新聞などのメディアが中小企業の団体として、意見を求めるようになりました。で、内部はどうかと言えば、まだまだです。同友会らしさがもうひとつ浸透していないように思います。要するに、同友会で学んで自社で実践する、その結果どうなった、という経営実践報告の積み重ねが同友会の財産ですが、そこら辺の報告例会や報告者が少ないですね。すべての活動が運営主義的になっているというかスマート過ぎるかな、本来はもっと泥臭いはずの経営実践が、「だから経営指針の成文化が必要です。」とか「経営理念が大事です。」といった、先に結論ありきの例会となって、結局サラッと参加してサラッと帰ることになってしまう。これでは物足りませんよね。昔はお互いの人生観がほとばしるような議論もありました。今はなかなか突っ込んだ議論にならないし、本音の交流も少なくなったかな。


-代表理事になっていかがですか?

代表理事としてその立場に相応しい人間にならなければなりませんが、まだまだ足りないです。足りない点を任期中にどれだけ成長できるかに挑戦します。


-全国行事に参加していかがでしたか?

熊本の会員は、もっと全国行事に出て行くべきです。私が衝撃を受けたのは、中同協主催の「第5回役員研修会」でした。田山顧問、赤石会長、鋤柄幹事長3名の報告を聞いて、中途半端な自分に気づかされました。その研修会参加が今の土地家屋調査士部門のパートナー誕生に繋がりました。自分がまず変わろう、一緒にやっていける仲間を誘おう、正直になろうと思いました。村中司法書士との出会いもほぼ同時期でした。それまで口に出せなかった「一緒にやろうよ」が言えるようになったんですよ。これも研修会に参加したお蔭と思いますね。それらを機に『経営指針書』も再度つくり直すことになりました。これからは、ネットワークや異業種との協働が重要になってきます。同友会理念で繋がった同友会会員同士だと連携を取りやすいと思いますね。
 根本は『人を生かす経営』、一緒にやっているメンバーを生かすことです。うちの理念は『全従業員の物心両面の豊かさを追求する』ここで皆成長しようということ。その為には皆が自分でこの仕事を楽しいなと思って貰わないといけないし、その状況を創り出すことが私にとっては、やり甲斐の領域です。


-小屋松代表理事の「核心」とは?

「一本の道」とでも言いましょうか、あれもこれもではない、私の拠り所は『労使見解』。『労使見解』を極める事を中心に据えてこれ一本で行く方がいいと考えています。



2012年9月号掲載

【インタビュー】
(株)ゆうプランニング 代表取締役 木村 正夫
(熊本同友会広報委員長)

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