熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

中長期的な社会の変化への対応

■景気の展望

わが国の景気は、昨年、海外経済の減速を主因に下振れましたが、今年はこうした局面を脱していくことを展望しています。日本銀行の中心的な見通しでは、実質GDP成長率は、今年度が前年度比+1.0%となるのに対し、2013年度は同+2.3%になるとみています。こうした中、熊本県の景気は、2月初までは弱めに推移していますが、下げ止まりに向けた動きもみられます。九州北部豪雨災害の復旧工事など公共投資の増勢が当面続き、住宅投資も持ち直すもと で、製造業の生産が回復してくれば、景気は下げ止まりから持ち直しへと転じていくと期待されます。


■中長期的な社会の変化への対応

こうした展望のもとで、今後、企業の経営環境が好転することも期待されますが、そうした時期においても、企業経営者の方々には中長期的な社会の変化に対応していくことが求められるように思われます。これについて、2点述べたいと思います。


1つめは、経済の中で需要が伸びる分野や内容が変化しているということです。消費についていえば、20年程前までは、60歳以上の人々の消費額は全体の2割に満たない水準でしたが、現在では4割を占めています。60歳以上の消費額の構成をみると、59歳以下の年齢層と比べて、交際費、医療・介護費、食費、旅行・宿泊費のシェアが合計で10%ポイント以上多くなっています。また、このうち医療・介護費の先行きについては、現状の医療・介護の利用状況が続くとすると、熊本県の場合、医療費は2025年まで増加を続け、08年より約15%多い水準に、介護給付費は2035年まで増加を続け、10年より6割以上多い水準に、各々達すると試算されます。人口動態に伴うこう した変化に対しては、先行きの動向もできる限り見極めながら、増加する需要をきめ細かく捉えていくことが求められるように思います。


2つめは、IT等の新技術が普及するもとで、無形資産への投資によって経営力を高める余地はないかということです。無形資産とは幅広い概念であり、例えば、①情報化資産(ソフトウエア、データベース等)、②革新的資産(研究開発、ライセンス、製品開発・デザイン等 )、③経済的競争力(戦略、ブランド、企業固有の人的資源、組織構造 等)、に分けられます。無形資産が注目される背景には、90年代後半以降、企業はIT革命への対応を求められるようになり、新しい技術を使いこなすソフト等の蓄積や組織変革、人材育成が重要になったとの認識があります。


しかし、日本における無形資産投資は90年代後半以降伸び悩んでおり、主要国の中で低位にあるとの研究がみられます。これによると、2000年代前半の上記3つの無形資産への投資額を比較すると、日本は、製造業の研究開発投資は大きいものの、全産業の経済的競争力への投資額はGDP比で2.9%と、米国の6.6%や英国の6.0%に比べてかなり少ない状況です。このことは、日本企業全体として、戦略やブランド構築、人材育成や組織変革への投資が細ってきたことを示唆しています。モノづくりなどの現場力が重要であるのと同様に、IT等の新しい基盤を商品・サービスの提供面で活用することや、ITを使いこなすための人材育成や組織変革に投資することも重要であり、こうした点に不足がないかを見直す意義は小さくないように思われます。


2013年3月号掲載

日本銀行 熊本支店長
坂本 哲也

昭和39年生まれ、東京都出身、
昭和63年3月東京大学法学部卒業、
4月日本銀行入行、
平成11年12月信用機構室調査役、
15年5月金融市場局調査役、
16年7月金融市場局企画役、
20年7月企画局企画役、
21年7月企画局参事役、
22年7月総務人事局総務課長、
24年7月熊本支店長

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