熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

生徒たちの明るい未来を願って

私はご縁があり、現在、合志市にあります県立ひのくに高等養護学校で勤務させていただいています。25歳の時に小学校教員としてスタートしましたが、恩師の勧めもあり、特別支援学校へ転勤しました。その後は、イギリスの作家、オスカー・ワイルドの書いた「幸福の(な)王子:The Happy Prince」の中に出てくるツバメが南の国に帰ろうとしたように、再度、小学校へ戻り、通常の教育に携わることを希望しました。しかし、障がいのある子どもたちとの出会いやその教育に心を込めて取り組まれている先生たちとの出会いを重ねるうちに、この世界で生きていくことを心に決め、今日に至っています。その間、知的障がいをはじめ様々な障がい種の特別支援学校に勤務し、多くの子ども達やその保護者の方々、また支援してくださる多くの地域の方々と出会ってきました。


現在、知的障がいや肢体不自由などがあり、学習上や生活上で様々な支援を必要としている人達のことを社会では「障がい者」という言葉で呼んでいます。そして、様々な支援を必要としている本人の生きづらさや暮らしにくさなどの状態のことを法令等では「障害」と表記されています。しかし、「障」や「害」という文字がマイナスイメージを与えることから、内閣府「障がい者制度改革推進会議」では、「障害」という表記を別の適切な表記にするための検討も行われています。しかし、「障害」の表記が変わったとしても日々の生活で生きづらさや暮らしにくさとして当事者が感じる差別や偏見などが即座になくなるわけではありません。 そのためにも、私は障がいのある人が「生きやすく、暮らしやすい社会」の実現のための制度改革や社会への理解啓発・交流を積極的に進める必要があると思っています。そのことによって、社会の全ての人達一人一人が豊かな人間性を育み、生きる力を身に付けていくとともに、社会で子どもや若者を育成・支援し、年齢や障がいの有無等にかかわりなく安全に安心して暮らせる共生社会の実現につながっていくものと信じています。私も長いこと特別支援学校で勤務し、子どもたちと実際に関わっていると、一人ひとりに応じた学習上や学校生活上での指導の仕方や支援の仕方など細かな工夫が必要なことは確かにありますが、子どもとしては何ら変わることがないことを実感しています。このことから、「障がい」とは何だろうと深く考えさせられることもたびたびありました。


さて、私が現在勤務している県立ひのくに高等養護学校は、比較的軽度の知的障がいの生徒が学んでいる創立11年目を迎えているまだ歴史の浅い学校ですが、卒業生の多くが地元企業等へ就労し、それぞれの職場で頑張っています。経済には全くの素人の私ですが、現在の国内外の経済や政治の動向から、これから先の時代もこれまでどおり生徒が力を発揮できる職種への就労が可能かどうか大変不安な面があります。このことから、従業員の7割以上が知的障がい者である日本理化学工業(株)の大山社長が、ある禅寺住職の言葉として、「障がい者の方たちが、企業で働きたいと願うのは、社会で必要とされて、本当の幸せを求める人間の証なのです」という言葉を紹介されているように、本校生徒を含め、一人一人の障がいの様子に応じた働く場がこれからも末永く有り続ける日本の社会であることを願っています。


2012年2月号掲載

熊本県立ひのくに高等養護学校 校長 平川 貞俊

熊本県立ひのくに高等養護学校 校長
平川 貞俊

昭和26年5月2日荒尾市生まれ、
51年3月熊本大学教育学部卒業、同4月天草郡御所浦町(現在、天草市御所浦町)の小学校に赴任、 55年県立菊池養護学校、59年から平成9年県立熊本聾学校、その間昭和61年に1年間横浜国立大学特殊教育特別専攻科に国内留学、 平成10年県立苓北養護学校、13年県立松橋養護学校、15年県立熊本養護学校教頭、 19年県立熊本聾学校校長、22年県立ひのくに高等養護学校校長、23年度末退職予定

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