熊本県中小企業家同友会

特集

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「熊本-福岡メガロポリス」形成への期待

-新幹線は「観光客を運んでくる乗り物」?

この拙稿が皆様の目に止まる頃には、九州新幹線全線開業に向けた最後のカウントダウンが進んでいるだろう。桜の馬場・城彩苑オープンを始め、沢山の開業記念イベントで熊本は大いに盛り上がっているはずである。


こうしたイベントの多くは、「関西を中心とする遠方からの観光客を熊本でお迎えする」ことを念頭に置いているようだ。確かに、新幹線は「観光客を運んでくる乗り物」としての意義がある。ただ、筆者自身は、九州新幹線の開通を、「熊本−福岡メガロポリス」形成の契機となり得るインフラの確立という意味で、画期的なイベントと捉えている。


ご承知のとおり、九州新幹線は熊本−博多間を最短33分で結ぶ。しかも1日130本、1時間当たり4本ペースという高頻度である。ちなみに東海道新幹線だと東京−小田原(神奈川県)が35分前後(1日約100本)、上越新幹線なら東京−熊谷(埼玉県)が40分前後(1日約80本)なので、それらよりも便利という訳だ。「新幹線は、バスや在来特急に比べ料金が割高」という指摘もあるが、時給換算したビジネスパーソンの人件費との比較で見れば、他の交通手段よりも往復1時間以上を節約でき、かつ定時性があることで、十分メリットはあると考えられる。


-300万人超の大都市圏形成のメリット

いずれにしても、「他の交通手段から新幹線へのシフト」を議論するだけでは、物事の本質を見誤る。大事なポイントは、利便性の高いインフラの登場に刺激されて、(単なるゼロサムではなく)新しい需要が喚起され、熊本−福岡間での人の往来が活発化する可能性が高い、という点である。福岡市の人口が140万人、熊本市の人口が70万人。小倉−博多間が新幹線で約20分であることを踏まえ、これに北九州市の100万人を加えれば、300万人超の大都市圏である。新幹線開通と稠密なダイヤ設定によって、首都圏、関西圏、中京圏に次ぐわが国4番目の人口集積、しかも成長著しい東アジアに最も近いメガロポリスが形成されていく基盤が整ったことになる。


こうしたメガロポリス形成はメリットが多い。例えば、各都市単独では運営が容易でない、人口の大規模集積を前提とする高度な文化施設(インターナショナルスクール、常設演芸場など)が数多く採算に乗るようになる。その結果、熊本で定時まで勤務してから福岡のコンサートに出掛けたり、逆に福岡から退社後に熊本の特色ある美術館を訪れるなど、既存住民の生活が充実する。企業活動の面でも、「海外や国内大都市圏並みの高度な都市機能」が利用できるとなれば、(そうしたインフラを生活の前提としている)研究者やその家族の当地への移住も容易になるため、既にみられ始めている多国籍企業の研究開発拠点の熊本への立地が一層加速することが期待できる。


もちろん、福岡や北九州の企業も、新幹線を使って熊本への進出を積極化させるだろうが、それを我々に対する脅威とばかり捉えるのは適当ではない。これらの企業は、我々と競合する面があると同時に、熊本の企業経営に役立つアイデアやサービスを提供してくれる側面もあるからだ。熊本の中小企業経営者の方々が、ビジネスインフラとしての九州新幹線を最大限活用して経営の幅を広げていかれるとともに、中長期的な「熊本−福岡メガロポリス」の形成から多大なメリットを享受できるようになることを強く期待している。


2011年3月号掲載

日本銀行 熊本支店長 本幡 克哉

日本銀行 熊本支店長
本幡 克哉

東京都出身、昭和62年3月東京大学経済学部卒業、4月日本銀行入行、平成11年5月名古屋支店調査役、 13年5月考査局調査役、16年7月考査局企画役、17年7月金融機構局企画役、20年7月国際局参事役、22年6月熊本支店長

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