熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

宝は若手の発想にあり

一昨年前のリーマンショックを契機に吹き荒れた世界的な経済混乱は、未だに回復したと言うにはほど遠く、中小企業家同友会の皆様も大変なご苦労があるかと思います。


県財政にとりましても予想を超える県税収入の大幅な減少をはじめ、多大な影響を被りました。国の経済対策に伴う大型の補正予算を組むことで、何とか景気や雇用に配慮した事業の財源を確保することが出来ましたが、折しも県においては、危機的な財政状況のもと財政再建への取組みを始めたばかりでした。


それは、歳入歳出両面にわたる抜本的な見直しを行うもので、未利用資産の売却や各種補助金等のカット、職員数の削減(4年間で▲5.1%;約1,200人)、さらには警察、教職員を含む全ての県職員の給与一時カットなど広範囲にわたるものです。


このような取組みは、職員にとっても辛いもので、ともすればモチベーションの低下につながりかねません。


そこで、苦しい中でもなんとか夢を持って仕事に取り組んでもらいたい、元気を出してもらいたい、そして、行政サービスの向上につなげたいという蒲島知事の発想で、頑張っている職員に光を当てて知事自ら表彰をしようということになりました。


まず、各部局で部局長表彰を行い、その中から35の取組みが蒲島賞(知事賞)候補としてエントリーされ審査会の開催となりました。民間の審査委員にも加わっていただき、知事、副知事の下白熱の審査が行われ、グランプリ、特別賞をはじめとした10の取組みがみごと蒲島賞を獲得したのです。多くのマスコミの取材もありましたので、あるいはテレビや新聞でご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。


民間の審査委員からも県職員がこんなにアイデアを出しながら頑張っていることを知らなかったというような感想や、励ましの言葉もいただき大いに盛り上がりました。職員のモチベーションアップに確実につながったのではないかと思います。


ところで、私が最も注目した取組みがあります。名付けて「もったいないプロジェクト」。県大阪事務所の若手職員が、よく話をする弁当屋のご主人から「昼時が過ぎたら売る弁当が無くなりスペースがもったいない。何かいい知恵はないか」と相談を受けたそうです。そこで、大阪での物産展で知り合った熊本の生産農家の方が、曲がったキューリなど規格外の野菜は商品価値がないとこぼしておられたのを思い出し、その空きスペースに置いて売ってみてはどうだろうかとひらめいたのです。


これが「見栄えはどないでもええ。安くて旨いモンやったら買ったるでー」という大阪人気質にヒットし、昨年度、モデル的に実施した協力店舗では、10 ヶ月足らずで200万円以上も売り上げたのだそうです。この取組みは、次々と広がり今年の5月現在では24の生産農家が48の弁当屋さんに熊本の野菜を送っているそうです。さらに地元のマスコミにも取り上げられ、熊本県産品の認知度が高まり、規格品の野菜まで売り上げが伸びてきているとのこと。もともと捨てるしかなかった規格外の野菜が収入につながり、空きスペースも有効に使えて生産農家も弁当屋さんも大喜びだそうです。


本人は、「自分のちょっとした思いつきをまさか上司がまともに取り上げ、同僚も一生懸命応援してくれるとは ̶ 幸運でした」と感激の思いで話をしてくれました。


若手職員のひらめきがビジネスチャンスにつながる・・・まさに宝は若手職員の発想にあったのです。


2010年7月号掲載

熊本県総務部 部長
松山 正明

昭和26年3月25日生まれ、昭和49年3月中央大学法学部法律学科卒業。
昭和49年熊本県事務吏員、平成10年総務部付(熊本市派遣)、12年商工観光労働部労働雇用課長、14年環境生活部環境政策課長、15年企画振興部次長、16年総合政策局次長、18年熊本県鹿本地域振興局長、20年熊本県議会事務局長、21年総務部長

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