熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

経営者のあるべき姿

熊本ファミリー銀行が福岡銀行と経営統合して、早いもので2年半が経過しました。私も頭取就任から2年余りになりますが、地元の皆様から色々とご指導いただきながら、何とか今日に至っております。


「現在私は単身赴任中ではありますものの、生活は極めて快適で、“熊本をエンジョイしております”」と申し上げたいのですが、ビジネスの環境は厳しく、なかなかそういう心境にはなれません。それでも地元の金融機関として、地元のお客様に愛され、お役に立ちたいと願いつつ、努力している毎日であります。私は、前の勤務先である福岡銀行から数えて35年間の銀行員生活を過ごしてまいりました。本当に数多くのお取引先にご指導いただき、様々なタイプの経営者の方々に接してまいりました。その経験の中で、私が経営者の方々から教えていただいた『経営者のあるべき姿』について、少しでも皆様のご参考にしていただければと思い、列挙させていただきました。


1.『数字に強い。』

 「経営者は自社のバランスシートを読めるべきだ。」とは優れた経営者の条件としてよく言われるところであります。現場至上主義になりすぎて、管理は人任せというのでは好ましくありません。


2.『本業中心である。』

サイドビジネスで成功しておられる例は少ないようです。どうしても本業が疎かになるからです。


3.『(野球に例えれば)ホームランは狙わず、コツコツとヒットを積みあげることが大量得点に繋がる。』

社運を賭けるようなことは時には必要かもわかりませんが、通常は成功の確率が高い途を選ぶべきです。リスクの取りすぎには注意したいものです。


4.『公私混同は禁物である。』

公私混同の風潮はすぐ社内に広まり、企業のモラルをダウンさせます。例えば、海外に出張をしたいがために、そこに出先を作るといったことなどは止めた方が良いと思います。


5.『社員を大切にする。』

ある経営者の方-社員に厳しいことでも有名-が、「社員やその家族の笑顔を見ることが一番嬉しい。」と私にしみじみと語ってくれたことがありました。本当にそのとおりだと思い、私も肝に銘じております。これとは逆に、社員を使い捨てにするような経営者で成功された例を私は知りません。


6.『しっかりした企業理念を持つ。』

目先の利益にとらわれてばかりで、しっかりした企業理念を忘れているような企業は、永続きしないと思います。


7.『金融機関を大切にする。』

これは手前味噌のようですが、私共金融機関を上手にご利用いただきたいという意味です。


以上7項目がお取引先の経営者から教えていただいた『経営者のあるべき姿』であります。最後の“金融機関を上手にご利用いただく”とは、近年は金融機関の取扱商品等の目に見えるサービスそのものに、それ程の差はありません。したがって各金融機関は、多くのお取引先とのお取引を通じて集めたデータを活用し、お取引先のお役に立てる情報を提供する“提案力”というサービスを競う時代になっています。


以前のように気合だけで(もちろん気合も必要ですが)お取引先を増やす時代ではありません。お取引先からみて、その金融機関と取引するメリットが感じられなければお取引していただくことができません。私は、耳障りの良い事ばかりしか言わない金融機関よりも、お互いにリレーションを深め、その企業の立場に立って、時には厳しい意見を言うことができる金融機関の方が、真の意味でお取引をいただくメリットがあるのではないかと確信しています。私共熊本ファミリー銀行も、知恵を絞って地元の中小企業の皆様方のお役に立てますよう努めて参りますので、どうぞ何なりとお申し付けください。


2009年12月号掲載

(株)熊本ファミリー銀行 代表取締役 頭取
鈴木 元

昭和25年11月30日生まれ、佐賀県佐賀市出身、昭和50年3月九州大学法学部卒、同年 4月(株)福岡銀行入行、平成15年6月取締役営業統括部長委嘱、18年4月常務取締役北九州本部長委嘱、19年6月(株)熊本ファミリー銀行取締役専務執行役員、19年8月(株)ふくおかフィナンシャルグループ取締役(現職)、19年9月代表取締役頭取(執行役員兼務)(現職)

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