各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
経営指針の活用と他者との 共存共栄を目指して
会員の皆様におかれましては、日々経営の工夫に邁進されていることと思います。熊本羅針の四半期毎の景況調査を担当し、はや1年が経ちます。熊本県でも景気の回復傾向の流れがみられる一方で、まだまだ今後の先行きの見通しには不透明な部分が多くあります。この先行き不透明な時にも経営指針がいかに役立ちうるのかについて、少し述べさせて頂きます。
景況調査の一環で毎年1回、経営指針の策定の有無、直近の決算状況、経営指針の策定方法と経営指針に関する知識の獲得方法について調査しています。調査結果は、別途ご確認いただければと思いますが、黒字企業の方が、経営指針の策定割合が高いという結果が明らかになりました。
では、経営指針を策定しましょうというように言えればよいのですが、なかなか簡単にそう言えない事情もあります。業績がいいから経営指針を作れるのか、経営指針を作るから業績がいいのかという因果関係が明らかにならないからです。赤字に苦しんでいる時に、経営指針を作る余裕はとてもないとお考えになるかもしれません。
我々は、経営理念、経営方針、経営計画からなる経営指針のことをマネジメント・コントロールシステム(以下、MCSと略します)と呼んでいます。MCSとは、経営者が経営目的を達成するために従業員を動かす仕組みのことです。MCSには大きく分けて二つの使い方があります。
1つめは、やるべき仕事をきっちりとこなすために作業を標準化して誰にでも出来るようにする使い方です。作業手順書を作ることが典型例です。もう1つの使い方は、今後どうなるか分からないが、議論を重ねながら、色々な新しいアイデアを生み出していくようにする使い方です。経営理念は、普遍的なものでしょうが、経営方針や経営計画を作っていくなかで色々なアイデアを生み出そうという、コミュニケーション重視の使い方になります。
これまでの研究からの知見によれば、MCSは安定的なことをする仕事についても、不確定要素の多い仕事についても、その使い方を変えることで複数の役割を果たすものであり、いかなる企業を運営していくために必須のものと考えられています。
また、MCSは組織内だけで役立つものではなく、外部との連携をとるための必要な道具立てにもなります。例えば、金融機関からの融資を受けるためには、MCSがないよりは、しっかりと運用出来ている方が会社の信用力が高まります。そして、MCSは何も自社内で作り上げるのではなく、金融機関、会計専門家、そして中小企業家同友会の支援を得ながら自社に合わせたものにしていけばよいものです。
企業経営を、1社だけでなく、様々な外部の利害関係者も含めて考えようという見方があります。これはビジネス・エコシステムと呼ばれており、一種の生態系として捉えるものです。ビジネス・エコシステムにおいて重要なのは、個々の企業が単独で存続しているのではなく、ともに依存しながら、相互作用の中でWin Winの関係を築こうというものです。今苦しい状況におかれる企業であっても、外部の支援を受けることで経営指針を策定し、業績の向上につなげられるのではないでしょうか
最後に、熊本県中小企業家同友会の今後ますますのご発展と会員の皆様方のご健勝を祈念するとともに、皆様のためにお役に立てるように努力いたしますので、よろしくお願いします。
2014年4月号掲載
熊本学園大学専門職大学院 専任講師
公認会計士
吉川 晃史
1979年10月、大阪府生まれ。
あずさ監査法人勤務を経て、2011年3月、京都大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。経済学修士。
熊本学園大学商学部助教を経て、2012年4月より熊本学園大学会計専門職大学院専任講師(~現在)
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