熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

戦略的マーケティング思考

会員の皆様は、日々の経営に明確な戦略をお持ちでしょうか。競合する企業に対し製品・サービスで差別化が出来ているかどうか。それが今一つ出来ていないといわれる方々にマーケティングの観点から提言できることをお伝えしたいと思います。


それでは何から始めるべきか。まずは自社が置かれている環境の分析。準拠すべき法規、市場の環境、戦略の目的・目標等をデータとしてビジュアル化(見える化)し、社内で情報共有、迅速に対応できる組織を作り上げる。次に自社組織で達成しうるターゲットを絞り込むこと。男性・女性、若者・年配の方、独身・家族等、具体的に絞り込んでいきます。続いて市場でのポジショニングを明確にする。加えてこれらを行うためには情報が必要となります。現代は情報の時代、インターネット等の情報ツールも有効に使いましょう。情報は集計、分析し、社員全員が共有出来るようにすることをお勧めします。これらを具現化している会社があります。アイリスオーヤマです。年度売り上げに占める新商品の比率が56%。この基になっているのが全国13,000店から収集する販売データ。週次で過去3年を分析。店舗別、商品別、商品導入実績、1店舗当たり販売実績を週単位、それに天候までも配慮した環境分析を行なっています。価格もドラッグストア、ホームセンターのチラシをチェック、社内だけでなく、小売店を回りヒアリングを行い「いくらだったらお客は買ってくれるのか」を最優先し、1年間で元が取れ、法人向けは設備投資して5年で償却出来る価格を設定する。毎週月曜日に行われる商品会議においては開発担当者(原料調達、製造、販売までを1人で管理担当する)が社員に向けてプレゼンテーションを行い、情報共有。これらを経て「機能はシンプル」、「価格はリーズナブル」、「商品はグッド」をコンセプトに商品化しています。これらの商品は店頭で欠品にならない様に迅速な商品配送が出来る仕組みも構築されています。物流拠点、工場はトラックが日帰りできる高速道路インターに近い所、九州では鳥栖に設置されています。これだけではない「生活の中に横たわる不足不満を見つけ解消する」を掲げ、顧客の意見、店舗の意見を聞きたいとの思いから、全国約770店舗にセールスエイドスタッフを派遣。商品説明だけでなく、店舗の案内も行い、直接顧客から「生活の中に横たわる不足不満」を聞きだし、話すことの中からしか得られない情報を商品開発にフィードバックしています。「ペット臭が気になる」との意見から開発されたペット用空気清浄器はその代表例です。ペット用品に対するノウハウを持つアイリスオーヤマと空気清浄器製造のノウハウを持つシャープにより具現化された「模倣されにくい差別化」製品の例といえるでしょう。常に顧客目線に立ち情報収集を欠かさず、迅速にニーズに応えた商品をだすというアイリスオーヤマのマーケティング。


現実問題としてそんなに多くの事は出来ない!果たしてそうでしょうか。今日の会社の地位を築かれた皆様は、これらの事を無意識のうちにやってこられたはずです。もっと良くしたい、業績を上げたい、そのためには自社が置かれている環境を再認識され、組織づくりをおこない、「模倣されにくい差別化」を実現するビジネスモデルをつくりあげること。これを手助けするのがマーケティング思考といえるのです。



2014年5月号掲載

熊本学園大学 商学部 准教授 吉川 勝広

熊本学園大学 商学部 准教授
吉川 勝広

1965年6月荒尾市生まれ。
熊本商科大学商学部卒業、大学職員を経て、2003年九州大学大学院比較社会文化研究科博士課程修了。博士(比較社会文化)。専門は流通・マーケティング戦略。単著(2012)『自動車流通システム論』同文舘。現在、熊本学園大学商学部准教授。商学部商学科長

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