熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

文系大学と産学連携

今回の熊本地震にて被害に遭われた会員の皆様にお見舞い申し上げます。復興を共に歩んで行きましょう。


昨今、ASR(Academic Social Responsibility)という言葉が使われるようになって来た。もちろん、これはCSR(Corporate Social Responsibility)の大学版である。大学の社会貢献あるいは地域貢献は地域創生とセットで語られる事が多い。東京一極集中が進む日本にあって、地域を活性化させ定住できる社会を実現することが国土の均衡ある発展という昔ながらの観点だけではなく危機管理の面でも重要になっている。大学の社会貢献もこの観点が必要だということであろう。


大学の地域貢献ですぐに想起されるのは、日経グローカルの地域貢献ランキングにおいて4年連続で一位になっている信州大学である。NHK大河ドラマ「真田丸」で舞台となっている地域の国立大学である。駅弁大学と呼ばれる各県一校の国立大学中、帝国大学を除き、県名、都市名がついていない珍しい大学である。信州大学は共同研究・受託研究が973件、自治体との連携協定は123にも及ぶ。また、松本市内をはじめキャンパスのある4つの地区にインキュベーション設備を持ち、レンタルラボなどで産業界と共同研究を行っている。


公立大学としては北九州市立大学が活発に地域貢献をしていることで有名だ。地域創生学群(学部に相当)を擁し、一年次からのインターンシップや、町中に大学堂というアンテナショップを設け、「ひびきのの杜」なる大学酒を開発するなど公立大学の堅いイメージとはかなり違う側面を見ることができる。


さて、我が熊本学園大学に目を移すと、残念ながら産学連携に関しては捗々しいとは言えない。「近大マグロ」や「熊大マグネシウム」のように理工系大学研究室でのseedsがある訳ではないので、「大学発ベンチャー」のような目玉となる発信が出来ないのが大きなファクターだと考えられる。このようなseedsが大きく育って地元の雇用も確保されれば地方創生の時代にふさわしい成果となるだろう。文系大学ではseedsを生み出すための研究室があるわけではないので産学連携とは親和性が無いのであろうか。


しかし、いま、ビジネスの形が大きく変わりつつある。「おひとり様家電」「ぼっち家電」という言葉をご存知だろうか。2つの言葉は良く似ているが、意味は全く異なる。前者がシングル世帯をターゲットとした製品を指すのに対し、後者は一人で設計する家電メーカーを指している。大掛かりな設備無しで3Dプリンタにより簡単に試作品が作れるようになったためUPQ社のように社員一人で次々にユニークな製品を生み出す会社が出て来ている。豊かな発想力があれば、文系人間でも尖った製品の設計が出来る世の中になって来たということだ。


今ひとつ、小さな会社を大きくすることも産学連携において重要と考える。地域創生とはすなわち地域で就職できる環境の整備とも言い替えられるだろう。ゼロから産業を興すのは難しいが、頑張っている中小企業を応援し大きくすることならば十分に力を発揮できるのではないか。


地域貢献という言葉は「上から目線」のニュアンスがあって好きではない。得る利益はむしろ大学の方が大きいのだから、地域連携あるいは地域共生の精神で共に学生を育てていただきたい。遅ればせながら、本学も地域連携センターを設立する。文系大学ならではの産学連携を始動したい。



2016年5・6月合併号掲載

熊本学園大学 副学長 堤 豊

熊本学園大学 副学長
堤 豊

1959年(昭和34年)生まれ。大牟田市出身。豊橋技術科学大学工学部卒‐同大学院修士課程修了‐九州大学博士後期課程修了。博士(情報科学)。1984年日本IBM東京基礎研究所入社、2000年熊本学園大学商学部教授。同大学で、e-キャンパスセンター長、就職委員長、大学院商学研究科長を歴任。2016年1月副学長就任。専門は情報工学

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