熊本県中小企業家同友会

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各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

大学生に求められる就業力(エンプロイアビリティ)

熊本労働局が発表した4月の県内の有効求人倍率は、1.63倍となり、全国10位と初めてトップ10入りした。(熊日)また、来春2018年3月卒業予定の大卒求人倍率は1.78倍。全国の民間企業の求人総数は、前年の73.4万人から75.5万人へと2.1万人増加した。一方、学生の民間企業就職希望者数は、42.3万人であった。
(リクルートワークス研究所)


報道では「空前の売り手市場」といわれ、採用選考に苦労する企業の姿が紙面に掲載されています。本学に求人を頂く企業の方々からも同じようなお話を聞くことが多くなりました。一方熊本震災の復興が落ち着いた後の景気低迷を危惧され、数年後に再び買い手市場になり今度は学生が苦労するようになるのではないかという情報もあります。


報道批判をするつもりはありません。前述の話題になると、いつまで日本の新卒採用は景気動向に一喜一憂したり、採用選考の時期論争をしているのだろうと思います。2009年のリーマンショックを受けた時でも、企業からの求人総数は就職を希望する学生数を超えた求人が大学には来ていましたし、現在のように新卒採用の開始時期を12月から3月に変更したところで就職活動の本質的な問題は解決されたようには思えません。


近年の大学環境は、大学進学率の上昇に伴う学生の大衆化と18歳人口の減少という外的要因によってユニバーサル化の状況が続いています。これにより大学のブランドとしての学力や学習意欲の保証が難しくなってきています。また、大学進学後に就職をするという大学から企業という経路が増え、大学教育と社会の繋がりが今以上に問われ、教育内容も多様化し、学習者の要求に柔軟になるとともに、新しいニーズに応えた教育内容を提供していく時代になっています。


そこで現在の社会環境を整理していくと、①18歳人口は減少しているが大学生は急増(大学数増加)、②企業の厳選採用は継続(採用人数に満たなくても基準は下げない)、③大手志向・外国人採用という事実があり、その影響を受けて①大学進学率は過去採用(進学率54.8%・全入学時代)、②進学も就職もせずに卒業していく人(約5万人)、③入社後3年以内で離職する人(高卒者40%、大卒者30%以上)という結果が出ています。


以上のことから本学では景気や採用スケジュールという短期的な問題ではなく社会構造的な問題であると考え、景気動向ではなく、これから社会に出て行く「人材」を育成する高等教育機関としては、社会に出る準備期間である学生時代に「社会」と「大学」を結び産学が連携した取り組みを進めていくことで、学生の主体性・専門性・社会性を醸成させる取り組みを始めています。具体的には、進学率が上昇することで多様な学生が入学し、その質的保証が問われていることを鑑み、2013年よりキャリア教育を刷新し、入学から卒業までをカリキュラムマップ化した「就業力育成MAP」を構築・内省化して、大学生が社会から求められる就業力(エンプロイアビリティ)を育成しています。また、2016年4月から、地域のリーダーとして活躍する人材を育てる「地域中核人材育成プログラム」もスタートさせました。


社会からのニーズとして、「強い学生」を育ててくださいといわれます。エンプロイアビリティとして言い換えれば、働きながら変化することを楽しめる「変化慣れしている人」、40年以上続くワークキャリアを通して活躍できる「学び癖がある人」と捉えています。大学での抽象的思考育成・専門性涵養に加えて、2つの資質を伸ばしていくこと。それは大学時代の経験学習=経験と内省の繰り返しを保障していくことだと思います。



2017年7月号掲載

熊本学園大学 就職課 課長 キャリア教育推進担当(キャリアデザイン論・地域中核人材育成プログラム担当) 嶋田 文広

熊本学園大学 就職課 課長
キャリア教育推進担当
(キャリアデザイン論・
地域中核人材育成プログラム担当)
嶋田 文広

昭和40年12月12日生まれ、玉名郡出身。熊本商科大学商学部商学科卒業(昭和63年)。大学卒業後民間企業にて人事・採用を経験後、(株)パーソナル・マネジメント取締役就任(平成27年3月退職)。九州内の大学でキャリア教育の設計及びキャリア教育課目講師として活動平成27年4月熊本学園大学事務局入職。平成29年4月より就職課課長を務める

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