熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

思い切った提携、登用により業務改革の加速を

熊本県内景気は緩やかに拡大しています。背景には、復興需要の本格化と、半導体関連を中心としたグローバル需要の拡大が挙げられます。先行きについても、災害復旧関連工事が高水準で続くほか、大型の再開発工事も控えていること、国際機関等では、海外経済が3%台後半の成長を続けると予測していること、を踏まえると、同様の基調が続くと考えられます。このように、経営の外部環境は、当面、昨年と同様に、良好な状況が続くと予想されます。

一方、経営の内部環境(人的投資、物的投資)は、趨勢的な人手不足への対処など判断の難しさ、厳しさが増しています。人的投資では、①人材獲得、②人材教育、物的投資では、③IT関連投資、が主なテーマでしょう。①と③については、「雇用・賃金体系の見直し」、「管理事務の高度化」に迫られており、これら業務改革には、②の中でも「社員の意識改革、IT技能向上」が欠かせないという関係にあります。

人材獲得では、働きやすさを高め、外国人労働者の雇用を進めるとしても、雇用・賃金体系を直ぐに大きく変化させることは容易ではありません。人材教育でも、組織文化の変革ですので、試行錯誤がつきものです。IT関連投資も、管理事務の高度化は、人をシステムに置き換えるだけでなく、組織や事務の抜本的な見直しを伴ってこそ、意味を持ちます。業務改革は、これまでの成功体験を取捨選択し、ビジネスモデルを再構築することですので、難しい判断と時間を要します。成功事例では、経営者が実行し続ける決意が重要な要素になっています。

ここに、業務改革を加速させるヒントがあります。サービス業など非製造業の労働生産性や技術革新は、企業間のばらつきが大きい、という興味深いデータです。つまり、サービス業、あるいは社内サービス部門で高い労働生産性を実現している企業があり、ベストプラクティスを共有すれば、生産性が大いに向上する可能性を示唆しています。

そこで有効なのは、業務提携や経営統合を進めることを通じて、他社の経営資源を活用することです。異業種であっても、経営のプラットフォームを共通化することで、管理部門では効率化が進みますし、営業部門では顧客との接点を増やすことができます。また、先進的な技術に親和性があるのはベテラン層よりも中堅若手層ですので、これまで経営から距離のあった中堅若手層の登用も有効な対策になります。

日本銀行が昨年12月に公表した「非製造業を中心とした労働生産性向上に向けた取り組み」をみると、全国的には、先進的な技術(IoT、AI、RPA等)の導入が着々と進み、大都市の大企業に限らず、地方の中小企業にも裾野が拡がっています。先駆的な企業に追いつくためには、提携、登用によって、競争意識、危機感の共有を梃にして、行動力を高め、時間を節約しなければいけません。

当面の経営環境が良好であっても、数年間のうちに、復興需要もグローバル需要も一巡します。一方で、業務改革の効果を得るには時間を要します。そう考えると、2018年は、一昨年の大地震を乗り越えて、持続的成長を実現するための分岐点といえます。大地震がもたらした大きな苦難を一丸となって打破するため、ベテランから中堅若手までの垣根、企業同士の壁を越えて、相互の理解、尊重に根差した「堅固なつながり」という財産を得ました。今はまさに、この財産を活用するときではないでしょうか。


2018年3月号掲載

日本銀行熊本支店長 倉本 勝也

日本銀行熊本支店長
倉本 勝也

1969年生まれ、熊本市出身、88年熊本高校卒業、92年一橋大学法学部卒業、同年4月日本銀行に入行。業務局、京都支店、調査統計局、預金保険機構、政策委員会室、システム情報局、総務人事局を経て、2013年12月政策委員会室広報課長、15年8月同室総務課長。16年4月地震後、一時的に熊本支店次長を兼務。17年8月から現職

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