熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

歴史、文化、自然 という資本

熊本県内の景気は、基調としては、緩やかに拡大していますが、改善の動きには一服感がみられます。こうした動きの背景には、生産面で弱めの動きが続いていることや、熊本震災後の復旧需要が減少する中で新たな需要を模索していることがあります。先行きについて、海外経済の動向や保護主義的な動きの帰趨、IT関連財のグローバルな調整の進捗状況などのリスク要因が生産動向や設備計画、企業マインドにどのような影響を与えるのか注意してみていく必要があります。また、地域における新たな需要の喚起やインバウンド需要の取り込みなどについても丁寧にフォローしていきたいと考えています。

地域経済の動向を中期的に眺めた場合、生産性向上を巡る取り組みは避けて通れないように思います。人口が構造的に減少していく中で、ゼロサムの世界で互いに奪い合うのではなく、相互にメリットのある形で社会を拡げていくような試みです。他の地域との連携を深めて、自らが外へと繰り出したり、逆に受け入れたりしていくなかで、それぞれの強みを活かし、相対的に課題のある事柄をサポートし合うことも、生産性を高めていくうえで意義のある動きです。

生産性向上の主な要因として一般に想定されるのは、資本蓄積と技術進歩です。資本蓄積は、機械や工場など設備投資による実物資産の増加がイメージされますが、地域において、先人から脈々と繋がる歴史やこれまで培われてきた文化、豊かな自然なども、蓄積されてきた貴重な資本であり財産です。オープンデータを活用した、持続可能な視点から地域の資本を見える化するツールであるEvaCvasustainableをみても、当地の自然資本などは上位に位置付けられています。当たり前のように存在するものかもしれませんが、そうした資本をどのようにすれば、これからの地域経済の成長に活かしていくことができるかを、あらためて意識すべきように思います。

技術進歩は、蓄積された資本をどのように活用していけるかということです。現在、地方創生は、熊本に限らず、日本各地において強く意識される課題であり、具体的な取り組みもさまざまに行われています。こうした知恵に学ぶこと、習うことは、有効なやり方であると思います。状況を取り巻く環境や前提が異なることは大いにあり得ますが、まずは真似てみることでそうした違いや当地らしさの発見もできるのではないでしょうか。先例に倣うことは消極的な対応ではなく、これからに向かう第一歩であろうと思います。

人口が自然に増加していく社会では、人口増加に合わせて資本を増加させることが有用な選択肢となりますが、人口が減少していく社会では、資本の活用の仕方を工夫することや、資本となるものをあらためて意識することが必要となります。社会の構造が変化していく中では、無作為がゼロではなく、マイナスとして作用することが多々あります。もちろん、新しい取り組みにかかるコストやリスクはきちんと認識して対処する必要があります。ただ、これから先、地域経済が発展していくためには、これまで受け継がれてきたものの価値をあらためて見つめ直し、他の地域との連携を深めながら、その先へと進んでいくことが求められているように思われます。

 

2019年9月号掲載

日本銀行熊本支店長 中村 武史

日本銀行熊本支店長
中村 武史

1968年生まれ、愛知県豊橋市出身、93年京都大学経済学部卒業、同年4月日本銀行に入行、政策委員会室企画役、総務人事局企画役、システム情報局企画役、金融研究所企画役、国際局企画役を経て2015年6月国際局国際収支課長、17年6月名古屋支店次長、19年6月から現職

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