熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

人手不足への的確な対応を

最近、「人手不足」ということが話題となることが多くなってきましたが、必ずしも人によってその意味するところは同じではないようです。そこで、ここでは、人手不足の意味するところを整理しつつ、中小企業の基本的対応策を考えてみたいと思います。

いわゆる人手不足とは、労働力の需要に伴うだけの労働力供給が確保できない状況と考えることができます。求人を出しても人材が採用できず、業務に支障が生じる状況です。現在、本県では、①年齢、②職種、③地域の3つの要因による不均衡(ミスマッチ)による人手不足が特徴的です。それぞれ異なった対応が必要ですので、一つずつとりあげます。

一つ目は、年齢のミスマッチです。この10年位は、働き手の数はほぼ横ばいで推移しており、決して減少していません。しかしながら、その内訳をみると、高年齢層が大きく増加したのに対し、若年層は減少傾向が続いています。このため、新規学卒者等の採用の際には、採用難を実感される企業が多いのではないかと思います。対応としては、若年者に各会社の良さを理解してもらう工夫を行いつつ、高齢者の雇用を更に進めるための人事・処遇制度の見直しや職場環境の改善を図ること等が考えられます。

二つ目は、職種のミスマッチです。当局のハローワークのデータをみると、事務的職業では求人数に比べて求職者数が倍以上で、就職難となっていますが、ケアワーカー、看護師、保育士、建設作業員、タクシー運転手、施設警備員、半導体チップ製造工等特定の職種では求人が求職者数を大幅に上回っており、採用難となっています。対応としては、労働災害の防止、長時間労働の是正、ハラスメントのない職場づくり等、職場の働きにくさを少しでも改善する職場環境改善が考えられます。

三つ目は、地域によるミスマッチです。台湾のTSMCの進出等に伴い、熊本空港周辺地域では、半導体製造関連の多くの企業の進出が見込まれ、人材獲得競争が激しくなることが予想されています。県内外を問わず、他の地域に目を向ければ、人材がいないわけではありませんが、直ちにこの地域で働いてくれる人を多く確保することは容易ではないと思います。対応としては、家庭との両立やキャリア形成のしやすい魅力ある職場づくりを行い、他の企業との差別化を図ることが考えられます。

「働きがいのある会社」であるかどうかは、給与の多寡以外の要因が大きいことがわかっています。中小企業家同友会会員の皆様方の様々な工夫により、一社でも多くの「働きがいのある会社」が増えることを心から期待しています。労働局でも「働き方改革」をはじめ、様々な労働問題に関する相談や支援策の紹介等を行っておりますので、何かありましたら、お気軽にご相談ください。

2022年7月号掲載

厚生労働省 熊本労働局長 新田 峰雄

厚生労働省 熊本労働局長
新田 峰雄

昭和38年6月生まれ。大阪市出身。昭和62年大阪大学人間科学部卒業、労働省(現厚生労働省)入省後、愛知労働局職業安定部長、職業安定局主任障害者雇用専門官、主任中央需給調整事業指導官、中央職業能力開発協会能力開発支援部長、国立吉備高原職業リハビリテーションセンター所長等を経て、令和4年3月より現職。

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