各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
昔とはだいぶ変わった
この頃の「新しい林業」
普段、街で生活していると林業の様子を目にする機会はあまりないと思います。国土の3分の2は森林で、その約4割は人工林です。これらの多くは戦中・戦後の乱伐などで各地にできた禿山に先人が営々と植林されたものです。戦後長らくこれらの人工林は育成途上の段階にありましたが、ようやく樹齢50年を超える森林が多くなり、利用期を迎えています。
ところが、コストばかりかかってほとんどお金にならない育成期が長く続いたせいで、山主の林業への関心が薄くなるとともに、山で働く人も激減してしまい、さあこれからというときにこれらの問題がネックになっています。
このような中で、一つの対応策として、長らく変化のなかった林業の現場でも機械化が進んできました。木の伐採と言えば通常はチェーンソーを使いますが、近年は高性能な林業機械が普及してきています。例えば、ハーベスターという機械は、重機のヘッドに取り付けたアタッチメントによって、立木を掴みながら根元を伐採し、そのまま横に倒して枝を払い、自動計測しながら2mや4mの丸太にカットするという工程を1台でこなします。加えて、快適なコックピッドで安全に作業ができるので、新たな若手の労働力確保にも期待が持てます。
一方、伐採跡地には苗木を植えて、森林を循環的に利用できる再生可能な資源として維持していくことが大切です。再び植林の動きが出てきた今、苗木の生産にも新しい動きが見られます。その一つがコンテナと呼ばれる容器で育成されるコンテナ苗の普及です。コンテナ内で育てるので根が大きく拡がらず、広い畑がなくても生産量を増やせるとともに、山で植えるときも掘る穴が小さくて済むので効率的です。最近はこのコンテナ苗をドローンを使って一気に山の上に運ぶ取組も始まっています。
また、スギやヒノキにも様々な品種がありますが、最近はエリートツリーと呼ばれるとても成長が早く形質の優れた苗木も出回り始めていますし、花粉の少ない花粉症対策苗木の生産も増加しています。
今後、人工林資源の循環利用の輪を回していくためには、木材の利用を増やしていくことも必要です。近年では、住宅に限らず、中高層のビルなどでも木造、あるいは鉄骨造との混構造などの建物が増えてきており、CO2を長期固定する面からも注目されています。まだ熊本周辺ではあまり見かけないので、今後に期待しています。
最近の林業には、他にもJ-クレジットの活用など新たな局面が見られます。皆様にも林業の新しい展開に注目して頂ければ幸いです。
2024年3月号掲載
林野庁 九州森林管理局長矢野 彰宏
昭和39年生まれ、千葉県出身
昭和62年農林水産省林野庁入庁
平成24年九州森林管理局計画部長
平成25年同局森林整備部長
平成27年林野庁技術開発調査官
平成29年林野庁整備課長
平成31年森林研究・整備機構審議役・理事
令和4年4月から現職
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