各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
「熊本県の産業振興に向けて」
熊本県中小企業家同友会の皆様には、県政の推進に対し、日頃から御理解・御協力をいただき、厚く御礼申し上げます。
本年、荒尾市の万田坑と宇城市の三角西港が「明治日本の産業革命遺産」として世界文化遺産に登録されました。こうした遺産を目にするとき、今日の我が国の経済的繁栄を達成した先人たちの努力を学ぶことができるとともに、また、明日の産業の形成に向けたヒントも得ることができると考えます。
三池炭鉱の主力坑であった万田坑は、明治35年から出炭を開始しましたが、イギリスから当時最先端の揚水設備や巻揚装置を導入し、明治・大正期における国内外の石炭需要を賄う最大級の炭鉱施設となりました。巻揚機をはじめとして、採炭から出炭までの一連の明治期の炭鉱施設が残されており、我が国の近代化を知る上で欠かすことのできない貴重な遺産です。
この万田坑の石炭を海外に輸出するために使われていたのが三角西港です。福井県の三国港、宮城県の野蒜港とともに明治の三大築港のひとつで、我が国初の本格的な近代港湾施設です。
オランダ人技師の設計に基づき造られたもので、日本伝統の石工技術と西洋の技術力で規格石材を積み上げて建設されています。歴史的に価値が高く、明治の三大築港のうち、当時の姿をとどめるものは本港のみであるという点で非常に貴重な財産です。
いずれも当時の先端を行く海外の技術を、外国人をいわば先生としながら、時に日本の伝統的な技術と融合させながらうまく取り入れ、発展の基礎にしたという点が印象的です。
また、今回登録された世界遺産は製鉄・鉄鋼、造船、石炭を中心とした重工業分野に係るものでしたが、当時、常に輸出品の第1位で外貨獲得のための戦略的輸出品であった生糸を始めとする製糸業、綿紡績業の発展といった点でも明治時代以降大きな足跡を残しています。
文献によれば、紡績業においては西洋近代技術を導入したプロジェクトが、1890年代に進み、産業革命の代表が熊本の地において一気に導入されています。こうした画期的な動きと並び、より地域と原料供給等の点で密接に関係する製糸業も同時期に発展をしています。民間発の取組みとして、養蚕業・製糸業が急速に発展し、西日本最大の養蚕・製糸県になっていったと言われており、そこでは、養蚕・製糸いずれにおいても、高度の技術の集積が成し遂げられていったと考えられます。
万田坑、三角西港の世界遺産登録は、西洋技術を柔軟に取り入れた近代化・発展の風景を示し、また養蚕・製糸業の例からも、明治時代から技術革新を発信する土壌がここ熊本には養われているということを強く感じます。
現在、明治の産業革命期とは文脈を変えて、人口減少社会と言われる中で今後の産業発展への取組みが進められています。県としても、地方創生に向けた人口ビジョン、総合戦略を10月に策定し、新たなビジネスの発展に向けた取組みを示しています。熊本は豊かな自然を有しており、まさに、養蚕・製糸業に見られたように、自然と共生するような産業づくり、アグリ・バイオ・ヘルスケア・食品加工・環境といった「自然共生型産業」というものが今後の発展の1つの種ではないかとも考えられます。新たな技術の集積とそれに基づく産業の振興が内発的に行われるような取組みを県としても今後進めていくことが必要ではないかと考えられます。
2015年12月号掲載

熊本県企画振興部長
島崎 征夫
昭和46年8月22日生まれ、東京都出身。東京大学経済学部卒業。平成7年大蔵省(現財務省)入省、国際局総務課長補佐、大臣官房秘書課長補佐、主計局主計官補佐(厚生労働第六、七係主査)、金融庁総務企画局総務課人事企画室長などを経て、平成26年7月より現職
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