熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

「フードバレーイノベーション」

当広域本部が管轄する県南地域(八代地域、水俣・芦北地域、人吉・球磨地域)は、面積では県土の3分の1強の36%、人口は県人口の6分の1弱の16%を占めていますが、県平均に比べ人口減少と高齢化が著しい地域です。


農業を中心とした1次産業のウエイトが高く、八代平野の冬トマトをはじめとする施設園芸作目、芦北地域のデコポンなどのかんきつ類、球磨地域のクリなどの落葉果実やお茶など、全国に知られた品目も数多くあります。


平成25年3月に策定された「くまもと県南フードバレー構想」は県南地域の地域資源である優れた農林水産物を活かして、さらに6次産業化、農商工連携による高付加価値化、食関連の研究開発機能や企業の集積、さらには八代港を活用した輸出の拡大などを目指しています。「くまもと県南フードバレー推進協議会」はその中核となる組織であり、県南地域を中心に現在会員数は民間、行政合わせて500を超えています。


特産の晩白柚を活用した商品開発や販路拡大、漁業者のカキ小屋開設による6次産業化、首都圏の飲食・食品関連企業の農業参入やICTを活用したハウス環境制御の取組み、協議会会員による福岡都市圏への共同出店など、様々な取組みが展開され、その成果、効果が徐々に広がりを見せています。加えて、材価の低迷から長く厳しい状況にある林業も、バイオマス発電や輸出によって需要が拡大し、明るい兆しが感じられます。


フードバレー構想は、関係者の連携のみならず、異業種も含めて様々なネットワークを形成することにより、これまでにない取り組みに挑戦し、ビジネスにつなげて行こうとするものです。


八代市鏡町に整備中のフードバレーアグリビジネスセンターや八代港の新たなコンテナヤードの整備など、県では関係部局が連携して引き続きこの構想の実現に向けて取り組みます。しかしながらそれらはあくまで環境整備であり、主役は事業者の皆さんです。フードバレー構想をビジネスチャンスととらえて、多くの事業者の皆さんに参画していただきたいと思います。


ところで、国、地方をとおして喫緊の課題は「まち・ひと・しごとづくり」の地方創生であろうかと思います。将来にわたって「活力ある日本社会」を維持するためには、人口減少問題の克服と成長力の確保は避けて通れない課題です。このため国は、「地方における安定した雇用を創出する」、「地方への新しい人の流れをつくる」、「若い世代の結婚・出産・子育ての希 望をかなえる」、「時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する」を基本目標として、総合戦略を昨年末に策定しました。


県、市町村においてもそれぞれに総合戦略を策定するよう努めることとされており、その元となる地方人口ビジョンの策定を皮切りに今後、議論、検討が開始されます。深刻な少子高齢化、人口減少化に直面する県南地域もピンチをチャンスに変えるよう議論を深めたいと思っています。


フードバレー構想は「食」を切り口にした取り組みですが、地域を元気にするという目的では、まさに「まち・ひと・しごと」と軌を同じくするものであり、これに絡めてさらに展開が広がるのではないかと期待されます。県南広域本部は、フードバレー構想の実現を通して、市町村、地域、事業者などがそれぞれの革新に果敢に挑戦する活力ある地域づくりを目指しています。



2015年3月号掲載

熊本県県南広域本部長 宮尾 尚

熊本県県南広域本部長
宮尾 尚

昭和30年八代市生まれ、昭和53年早稲田大学卒、昭和53年熊本県庁入庁、平成17年総務部行政経営課長、平成19年商工観光労働部商工政策課長、平成20年商工観光労働部首席審議員、平成21年球磨地域振興局長、平成23年企画振興部地域・文化局長、平成25年~熊本県県南広域本部長(現職)

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