各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
日本一狭い校長室
…リーダーとは何か
衆院選が終わりました。その前段の自民党総裁選と立憲民主党代表選から「リーダーとは何か」が問われ続けた秋でした。
話をグッと身近に転じます。10月半ば、熊本市の県立「ゆうあい中」を訪ねました。中学校に通えなかった15歳から87歳までの37人が今春から中学校の課程を学び直しています。「戦後の混乱期で学校に通うどころではなかった」「家が貧しく給食費も払えず、働くしかなかった」など、事情はさまざまです。訪問した日は体育祭の予行演習に目を輝かせていました。
この学校を訪れると、玄関脇の校長室の狭さに驚かされます。業務用と応接用の小さな机があるだけの4畳ほどの小部屋。「もともと倉庫にする予定だった場所を校長室にしたんです」と校長の小原ひとみさん。生徒が過ごす教室の方を少しでも広くしたいという思いからでした。小原さんの心意気を全教職員も共有し、学ぶ側と教える側の真心の交流が日常の光景となっています。
実は私は小原さんが県教委に勤務されていた時からの付き合いです。私は今年6月にエフエム熊本に来るまで、熊本日日新聞社で主に報道を担当してきました。2016年の熊本地震の際、熊日の記者も被災したり、負傷したり、エレベーターに閉じ込められたりと、大きな痛手を受けながら日夜、取材していました。
編集局では「記者だって被災者だ。家庭の再建も抱えている」「このままでは記者はパンクしてしまう」と悲鳴も交錯しました。その厳しい現実を理解しながらも私は「今、地震の実相を伝えなくてどうする」「悲惨な現場があるうちに記録しておくことこそ記者の使命だ」と説得しました。ようやく納得した記者たちは被災地へと散っていきました。
後日、この時の葛藤を文章にした私に「この文を中学生に読ませたい。困難な中、地域のために諦めずに頑張る大人の姿を知らせたい」と訴えかけてきたのが小原さんとその後輩の若元美加さん(現松橋中教頭)でした。結局、この文章は中学生向け地震関連教本「つなぐ」に「地元紙の記者として」の題で収録され、授業でも活用されました。小原さんたちの着眼に感心しました。
さて、災害報道の経験から私がエフエム熊本に移って直ちに推進したのが県内ラジオ各局の災害時連携でした。熊本放送、熊本シティエフエムの社長とも思いを共有。大きな災害時には会社を越えてスタッフや資機材を融通し合い、情報提供というラジオの使命を果たそうという三社協定に結実しました。
「リーダーとは何か」を自問する日々です。日本一狭い校長室(恐らく)を訪ねてみると、そのヒントが得られる気がします。
2024年12月号掲載
株式会社エフエム熊本
代表取締役社長山口 和也
1959年12月氷川町出身。
宇土高校、九州大学経済学部卒後、1984年熊本日日新聞社入社。熊本県政、熊本市政などを長年取材。政経部次長、論説委員、社会部長、編集局次長、取締役ビジネス開発局長などを経て、2021年常務取締役。2024年6月からエフエム熊本(FMK)代表取締役社長。
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