一般社団法人 熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

物流業界を取り巻く
現状について

公益社団法人熊本県トラック協会会長の下川と申します。熊本県中小企業家同友会の会員企業の皆様には、当協会の会員が日頃より大変お世話になっておりますことに厚く御礼申し上げます。公益社団法人熊本県トラック協会は、営業用緑ナンバートラックの運送会社で組織された団体であり、現在県内に757会員が在籍しております。当協会には、大手運送会社から個人事業者まで幅広く会員がおりますが、実態としては車両数20両以下の会員が75%であり、中小零細企業の割合が高い業界でございます。

トラック運送業界は、近年の燃料価格の高騰が経営を圧迫し、加えて若年労働者の確保が経営課題であり、ご存じのとおり本年4月からの2024年問題(労働時間上限規制、改正改善基準告示)により、運転者の労働時間が短くなり、輸送能力の低下は避けられない状況となっております。

政府においても「物流革新に向けた政策パッケージ」を打ち出し、1.商慣習の見直し、2.物流の効率化、3.荷主・消費者の行動変容など緊急に取り組むべき対策について、皆様方へ対応をお願いしているところです。

昨年度は、このような業界の状況をご理解いただくため、テレビ、新聞、経済誌などに幅広く広報を展開し、PRを行いました。ご覧になった会員企業の皆様も多数おられるのではないかと思います。トラックによる輸送は、国内貨物9割を担っており、何も対策を取らなければ2030年には輸送能力が34%不足すると試算されており、野村総合研究所の推計では、熊本県においては38%と予測されています。今後価格転嫁が進まなければ、運送会社も減少し、更に輸送能力の低下が著しくなるような状況を迎えるのではないかと危惧しているところです。

これを改善していくには、ドライバーの確保が重要となりますが、現状としてトラックドライバーの労働環境は厳しく、全産業と比較し2割長く働くものの、1~2割給与が安い状況にあり、決して魅力ある業種とはいえないのが実状です。私はこの業界の肝はドライバーと考え、「ドライバーファースト」を協会運営の柱にしております。そのためには給与の改善が重要であり、その原資となる「標準的な運賃」について、熊本県中小企業家同友会の会員企業の皆様にご理解をいただき、公正な取引での運賃見直しをお願いしたいと考えております。

国においても「トラックGメン」を設置し、買いたたきなど荷主の悪質な商取引の情報収集を行い、先般は企業名が公表されるなど持続可能な物流の達成に向けて取り組んでもらっているところです。

このような現状を踏まえ、もし運送会社から運賃や荷役作業等について相談がございましたら、お話をお聞きいただくとともに、長時間の荷待ちや契約にない附帯作業の依頼など輸送効率化を妨げるような行為が無いよう、ご理解とご協力をお願いしたいと存じます。

2024年6月号掲載

公益社団法人熊本県トラック協会 会長 下川 公一郎

公益社団法人熊本県トラック協会
会長下川 公一郎

1969年生まれ、54歳。菊池郡大津町出身。九州学院高等学校~九州東海大学工学部経営管理学科卒。92年城東運輸倉庫株式会社入社、93年専務取締役、2001年代表取締役就任。2013年公益社団法人熊本県トラック協会理事・副会長就任、2023年6月会長に就任。その他団体の役職:熊本県倉庫協会理事、肥後大津ロータリークラブパスト会長。趣味はゴルフ、大型バイクツーリング。

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