各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
熊本の輝く将来に向けた「共育」の推進を
我が国のこの150年を振り返れば、大きな変革を経験してきた歴史があります。その度に知恵を出し新しい価値観を創り、また、新たな社会を担う人材の育成によって困難を見事に乗り越えてきました。明治維新では、世界と繋がり発展していく道を選びました。世界に伍した近代国家を創るために、政府は明治20年に九州熊本の地の第五高等学校を含む5つの高等教育機関を設置しました。多くの人材を世に輩出し、欧州の文明や制度を取り入れて急速に国力を付け、世界の第一線国へと成長しました。次の大改革は第二次世界大戦の後の時代です。焼け野原のゼロからの出発を不屈の精神で「Miracle Japan」と呼ばれる奇跡の復興へと導きました。質の高い均質な人材教育を普及させ、チームワークや繊細な匠の技を駆使することで質の高い産業社会を実現し、「Japan as number one」と言われる世界有数の経済大国に発展させました。
しかし、その後50年余も経てば、当然ながら世界は新たな局面を迎えます。30億人を擁するアジア諸国の発展を中心に、新しい時代が凄まじい勢いで進んでいます。それが現代社会です。我々は今、三つ目の大きな変革期の真っただ中にいます。その中で我が国や九州・熊本の未来を設計することが必要です。
今日、我が国がそして熊本がその存在感を示し国内外に冠たる地位を築いていくためには、その得意分野や特長を充分に認識し、それらを活かしながら国内外に情報発信することが必要です。これまでは当然として、あるいは明確に意識されていなかった地域や自社の特有の価値に基づく経済活動を発展させることが必要です。今般の東京オリンピックの招致活動やプレゼンテーションは、特長を見事に際立たせた点で学ぶべきことが多くあります。
熊本は、人々の高い環境意識、良質の水や農産物等が豊かであることや歴史文化資産に富んだ土地柄などの強みを持っています。アジアに近い有利な地理的な位置や長年の交流実績も優位性です。熊本県中小企業家同友会の企業活動にそれぞれの立場からこの高い優位性を充分に活かすことができれば魅力的な地域づくりに繋がります。人々の交流(観光)にとっても効果的です。これまでの知見や経験を組み合わせて、新しい価値を生み出す努力は活発な地域の経済活動を促し雇用の場の創出にも繋がります。グローバル化がさらに進んだ10年後20年後の社会を考えれば、広くアジアや世界に目を向けることで地域の新しい未来が見えてきます。
当同友会が提唱されている「共育」は極めて重要な概念です。お互いに相手を認め合い、一緒に成長する、一緒に大きく育つという「共育」の理念は全てを可能にします。例えば、互いに相手の良いところ(特長)を認めて、公の場で正当に褒め合うことができれば、自分で自分(自社)を売り込む以上に大きな効果が期待されます。互いの企業が共に育っていけば、地域の企業団全体として大きな成長に繋がっていくことは間違いありません。
熊本地域での14の高等教育機関の連合体である「大学コンソーシアム熊本(旧:高等教育コンソーシアム熊本)」は、地域の発展にも責任を持つ存在です。地域のシンクタンクやオピニオンリーダーとして、また、地域発展のコーディネーターとしての機能を今後も強化して、地域社会の未来のために一層の努力でその役割を果たしたいと思います。
2013年11月号掲載
大学コンソーシアム熊本 会長(熊本大学長)
谷口 功
奈良県出身。昭和45年東京工大理工学部卒業。50年同博士課程修了(工学博士)。52年熊本大学工学部赴任。助手、講師、助教授を経て平成2年教授。14年工学部長(3期)を経て21年4月熊本大学長就任、現在に至る。他に、国立大学協会副会長、熊本有機薄膜技術高度化支援センター長、大学コンソーシアム熊本会長など。専門は電気化学
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