各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
知的資産経営のすすめ~後継者育成と事業承継について考える~
日本経済は、アベノミクスの推進により回復傾向にあり、中小企業・小規模事業者の景況も改善しているものの、円安による原材料仕入価格の上昇等により、依然厳しい状況にあります。
さて、私ども中小企業基盤整備機構(中小機構)は、国の中小企業政策の実施機関としまして、「385万の中小企業にとどけ。日本を支える中小企業におくる、3つのエール」として【チャレンジ 理想に挑む】【チャンス 需要を掴む】【チェンジ 変化を取り込む】を送り、これらに取り組む中小企業の皆さまに専門家派遣や販路開拓支援等のハンズオン支援、地域資源活用事業等の新事業展開の支援や共済制度など、企業のライフサイクルに対応した多彩な支援メニューをご用意しています。
そのメニューのひとつに後継者育成や自社の経営基盤強化に資する人材育成支援事業がございます。それを実施しているのが、当機構が全国に9校設置している中小企業大学校です。その1つである人吉校は平成7年10月に開校、おかげさまで本年、開校20年を迎え、これまでに2万3千名を超える方々にご受講いただいております。
当校の研修の特長は階層別、職種・分野別に多彩なテーマをご用意し、講義形式もグループディスカッション等の演習を多く取り入れ、受講者参加型で、自社の課題解決に直結した実践的な内容としている点です。最近は、当校のメイン研修である経営管理者養成コースを後継者育成のツールとして、ご受講される企業様が増えています。本研修は、24日間(4日間×6回)で行われ、座学とゼミナールのハイブリット研修となっています。座学で経営管理者として必要な知識とスキルを習得し、それらを活かして、ゼミナールで自社課題解決のためのアクションプログラムを作成、研修の最終回でそれを発表していただきます。その際には派遣元の経営者の方にご来校いただき、さながら決意表明のような形で実施、大変高い評価をいただいています。
また、当機構では、本コースの受講と支援メニューである事業承継円滑化支援事業を「知的資産経営」をキーワードに、後継者育成と事業承継を連動して進める取り組みを行っています。具体的には、商工会や商工会議所等の支援機関や地域金融機関のサポートにより、知的資産経営報告書を作成することをその手法としています。知的資産とは、企業における競争の源泉力である人材、技術、知的財産(特許、ブランド)、組織力、経営理念、顧客とのネットワーク等、財務諸表には表れてこない目に見えにくい経営資源の総称です。
この知的資産経営報告書の作成の目的は、自社の強みである知的資産をしっかり把握し、それを活用することで業績の向上に結び付ける経営を行うことです。これが後継者育成とどう関係するかですが、事業承継については必要性を感じながらも、なかなか進んでいないのが実情です。当機構は、この知的資産経営報告書を現経営者と後継者の共同作業により作成していただくことで、現経営者と後継者がお互いの経営に対する考え方について、意見を交わすきっかけにしていただくことを考えています。現に、この報告書の作成に取り組んだ経営者様からは「後継者と経営に対する意識が共有できたことが最大の成果」というお声をいただいています。
経営者の皆さま、後継者育成と事業承継、知的資産経営を基に取り組むことを考えてみてはいかがでしょうか。
2015年9月号掲載
(独)中小企業基盤整備機構九州本部
中小企業大学校人吉校 校長
美野 洋二
1966年生まれ。福岡県北九州市出身。北九州大学(現:北九州市立大学)卒業後、1989年4月 地域振興整備公団(現:中小企業基盤整備機構)入団。2013年 九州本部人材支援課長兼地域振興課長。14年九州本部中小企業大学校直方校研修課長兼業務課長。15年4月より現職
最新の特集記事
持続的な自主自立の
まちづくりに向けて
熊本市西区長 石坂 強
本年4月より、熊本市西区長に就任いたしました石坂と申します。 貴会をはじめ会員の皆様方には、日頃から西区のまちづくりへ...
社会変化に伴う
行政書士の目線
熊本県行政書士会会長 櫻田 直己
この度「会員中小企業家に向けての提言」というテーマで執筆させていただくにあたり、私達行政書士について説明いたします。 ...
助成金を活用した
賃上げのすすめ
厚生労働省 熊本労働局 局長 金成 真一
人手不足が進む中、「賃上げ」や「省人化投資」を考えている企業の方は多いと思います。 人口を年齢階級別に見れば、若年者は高...