各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
大学生の就職企業選択時の視点
『第47回熊本同友会景況調査報告』(「熊本羅針」2016年1月号)によると、同友会会員の皆様が挙げる経営上の問題点の1位は「従業員の不足」だそうである。思うに企業の人材不足への対応については、「従業員の採用」と「従業員の退職」が問題となろう。そこでここでは同友会会員の皆様のご参考に供するために、就職情報サービスを行う「株式会社マイナビ」が行った『2016年卒マイナビ大学生就職意識調査』の調査結果と、企業と学生との間に立つ大学の人間として、私が日頃学生たちと接する中で気付いた「今どきの大学生の就職企業選択時の視点」を紹介するとともに、経営の第一線で活躍されている同友会会員の皆様方に対して甚だ僭越ではあるが、「従業員不足」問題への若干の提言を申し上げたいと思う。
さて、最近は求人企業の求人票に記載された休暇日数を気にする学生が増えてきたような気がする。自分自身の経験を一般化するつもりはないが、30年近く前の私自身の就職活動の時、年間の休暇日数を特に気にしたことがなかったためとても意外な感じで受けとめているところである。しかしこの傾向は本学の学生だけではないようで、マイナビの調査によると、大学生が行きたくない会社は「休日・休暇がとれない会社」だとする回答が近年増加傾向にある。逆に企業選択のポイントは「社風が良い」「勤務制度、住宅など福利厚生が良い」が増加している。そして学生の『就職観』を問うた設問で一番多いのは「楽しく働きたい」という回答だった。また企業選択のポイントとして「給与面の待遇」は比較的に重要視はしていないようだが、これは選択肢が限られたアンケート(2項目の選択)の結果であるから鵜呑みにはできないと思う。実際学生と話してみると、給与が安い企業は学生から敬遠される傾向がある。学生の本音の部分では、「給与面の待遇」は企業選択の優先順位として決して低くはないと思われる。また、似たような調査機関が実施するどのアンケートにもあまり触れられていないが、就職する企業を選ぶ際に「親が認めた(親が知っていると言っても良いかもしれない)」企業を選択する傾向が最近増えてきたように思える。学生の企業選択において「親の影響」がかなり大きいようである。以上のように「今どきの学生たちは就職先に居心地の良さを求めており、その就職先を決定する時点での親の影響は想像以上に大きい」という印象を私は持っている。
ところで、厚生労働省の統計では大卒新入社員の3年以内離職率は30%を超えており、熊本県内でも同様の結果だという。そしてその主な退職理由は「人間関係・仕事のミスマッチ」だという調査結果がある。このうち「仕事のミスマッチ」は我々大学が学生に対するキャリア教育や就職指導をますます充実させて解決のために貢献すべきだと考えている。一方、社内の人間関係を良くして、学生が希望するところの「居心地の良い環境」にするのはやはり会社の役割であろう。もちろん従業員を甘やかせというわけではなく、例えば従業員同士が気軽に声を掛け合えられるような風通しの良い社内環境にするだけでも居心地は良くできるはずである。そういった小さな対応の積み重ねが社内を居心地の良い場所に変え、新卒の採用活動に良い効果をもたらすとともに離職率を下げ、ひいては「従業員不足」の解決に繋がるのではないだろうか。
2016年3月号掲載
熊本学園大学 就職課長
熊本県学生就職連絡協議会会長
松隈 英明
昭和41年1月28日生まれ。熊本市出身。熊本商科大学(現熊本学園大学)商学部経営学科卒業。平成元年 熊本商科大学(現熊本学園大学)事務局入職。経理課長補佐、教務課長、内部監査室長などを経て、平成26年10月より就職課長また現在「熊本県学生就職連絡協議会」の会長を務める
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