熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

「ひのくに」の人づくり

いまだ収束を望めない世界的な苦難であるコロナ禍、医療の現場で命をかけて献身的に尽力されている方々に改めて敬意を表しますと共に、この災禍で空しくなられた方々のご冥福をお祈りします。

ひのくに高等支援学校は、本年度、開校20年目、「はたち」の節目を迎えました。本校は、平成13年に本県高等養護学校の嚆矢として産声を上げ、「生徒一人一人の能力・特性に応じたきめ細かな指導に配慮しながら、生徒の自律的、主体的な態度を尊重し、社会自立・職業自立のための教育を行う」という教育目標を標榜し、「心…清く、道…正しく、生…逞しく」の校訓の下、園芸科、工芸科、クリーニング科、窯業科で学んだ596名の若人を社会人として世に送り出してきました。「環境が人を育て、また、生徒も自らの環境を作り上げていく」視座に立ち、教職員・PTA・地域が一体となって、「キャリアを繋ぐ」「人と繋がる」「社会と繋げる」教育を実践しています。

本校の設置目的は「社会自立・職業自立」の一点に集約されています。だからチーム学校として全職員の目指す学校像が鮮明であり、確かな共通理解の下に各々の持ち場で主体的な教育活動が実践できていると理解します。生徒の進路保障に取り組んだ結果、昨年度は、一般企業就労率91%の過去最高値を達成することができました。おかげさまで、本年度も同率の実績を上げることができました。本校は、通常の高校のような求人形態ではなく、待っていても求人票は来ません。3年間の専門学科を中心とした「社会自立・職業自立」に向けた教育課程に沿って、「現場実習」で適性を見極めたうえで求人票を出していただきます。謂わば、本校の「人づくり」を直に見ていただき、「人」(生徒)に触れていただくことが、本校の進路保障の形です。また、本年度からの新たな取組として、文部科学省から研究開発学校の指定を受けています。教育課程改善に関する研究開発であり、研究成果の報告のみではなく、本校教育目標達成に向けての「教科指導力」向上も視野にあります。生徒の自己実現の領域を広げ、それがより高次な「自立」へとつながり、結果的に新たな「ひのくに」の魅力を創出する役目を果たしてくれるものと期待しています。

年度当初、生徒達に、「自ら感じること、自ら考えること」を大切にして生き抜く力を身につけて欲しい、と伝えました。隣の人の心の痛みや思いを感じ、その人と手を繋いで生きてゆく方法を考えてください、と呼びかけました。コロナ禍はいとも簡単に隣人との「接触」を断ち、リモート社会への移行を後押しするデジタル化の神話が、「非接触」の浸透に拍車をかけています。しかし、それでは育めない大切なものがあることを、私たちは疾うに承知しています。人の手の温もりは、「命のありか」を伝える最もシンプルで正しい体感です。少し前までは想像もできなかった「非日常」が「日常」として私たちの教育活動を制限する中、いかにそれを補完して、感性と知性を身につけた「人」としての自立を果たしてゆくか、生徒たちを導く私たちの「人づくり」は新たな局面を迎え、そして乗り越えてゆかねばならないと、切に感じます。

結びに、貴会の皆様には、日頃から本校教育活動に格別のご高配を賜り、ご支援いただいていることに感謝申し上げます。皆様のご健勝とますますのご発展を祈念いたします。

2021年3月号掲載

熊本県立ひのくに高等支援学校 校長 真田 武

熊本県立ひのくに高等支援学校 校長
真田 武

昭和55年陸上自衛隊少年工科学校26期生として入校。
霞ヶ浦、十条駐屯地勤務を経て、平成元年に國學院大学を卒業後、熊本県立学校教諭となる。
倉岳高校、阿蘇清峰高校、熊本北高校に教諭として勤務の後、熊本商業高校、玉名高校で主幹教諭、水俣高校教頭、同校副校長、東稜高校副校長、玉名高校副校長として勤務。
令和2年より、ひのくに高等支援学校にて校長。

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