一般社団法人 熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

「キャリアを繋ぐ」「人と繋がる」 「社会と繋げる」教育の実践

ひのくに高等支援学校は今年で開校16年目を迎える思春期の学校です。軽度の知的障害のある生徒を対象とし、「社会自立」「職業自立」という理念をもとに、400人以上の卒業生を社会へと送り出してきています。しかし、この16年、激動する社会情勢や雇用状況の変化、障害者差別解消法施行に伴う環境の変化、学習指導要領改訂、社会福祉制度の大きな転換など、時代の変化に応じて臨機応変に順応していく適応力を持った学校が求められているのも事実です。


そこで、今年度4月に本校に赴任した際にキャリア教育の視点から学校教育を見つめ直し、提言したのが標記の学校経営・教育活動実践の指針です。


1.キャリアを繋ぐ教育実践

キャリアとは労働や就職のみにとらわれず、自分でやれることを増やしていこうとする態度や意欲を育み、自らの生き方や進路を主体的に考え、進路を適切に選択できる生きる力のことです。生きる力を中学校から本校における一貫教育や段階的、系統的指導へそして社会へと繋いでいくことです。


2.人と繋がる社会生活力育成 

共生社会においては人と人とのやり取りが不可欠です。家族の中で、学校生活の中で、地域社会の中では必ず人と人とのやり取りが生まれます。そのような集団の中で自分自身の個性を発揮するとともに、当たり前のことを当たり前にしながら、自他共に認め合える人間関係をつくることです。


3.社会と繋げる進路指導

自分の持っているキャリアを自己認知し、自分にあった仕事は何か、自分の目標は何かなどを自分で選択し、自分で決め、自分で責任をとっていく力を醸成することがキャリア教育です。さらに、社会のルールやマナーの理解、善悪の判断とともに、礼儀を重んじる人格者として生きるための素地を育成することでもあります。特に、今年の参議院選挙から選挙権が18歳に引き下げられ、政治に主体的に参加することになります。自分たちの将来を託すために、自分で考え、自分で決定するとともに、責任も問われます。本校においても「政治的教養を育む教育」として、昨年度から授業に取り入れ、1年生から段階的な指導に取り組み、基本的な知識だけでなく、政治的な判断力、適切な態度や行動の育成を図っています。


以上のことを、「心 清く」「道 正しく」「生 逞しく」という校訓と照らし合わせながら、共生社会の一員としての人間関係づくり、道徳心の育成、生きる力の育成をすることが本校の教育です。


また、多様化する学校現場の業務から教職員の負担も増大し、「生徒と向き合う時間」もとれないという実情も指摘されています。そこで、「学校改革プロジェクト」という視点から「校務改革」「授業改革」にも今年度から取り組み始めています。プランシートを作成し、シンプル、スリムな組織づくりを目指したいと考えています。



2016年8月号掲載

熊本県立ひのくに高等支援学校 校長 中山 龍也

熊本県立ひのくに高等支援学校
校長
中山 龍也

昭和34年4月熊本市生まれ、熊本大学教育学部卒業。58年から熊本大学教育学部附属養護学校(現在の附属特別支援学校)に勤務。その後黒石原養護学校、菊池養護学校に勤務、その間に、熊本大学大学院に2年間国内留学。平成20年から附属特別支援学校、荒尾支援学校教頭、25年より荒尾支援学校にて校長、28年よりひのくに高等支援学校にて校長。自閉的傾向のある重度知的障害者の父親として附属養護学校PTA会長経験

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