各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
生産性向上に向けチャレンジを
熊本経済の現状と展望
熊本地震前後で、当地の景気は大きく変わりました。震災前は、地域や業種によっては弱さを残しつつも、緩やかな回復基調を辿っていました。もっとも、震災を経て、製造業では工場の建屋や生産設備が破損し、生産活動は落ち込みました。また、百貨店やスーパーなどの商業施設では、天井の崩落など店舗が被災したことに伴い、多くの先で、営業休止を余儀なくされました。
こうした供給面の制約を主因に、熊本県経済は大変厳しい状況に陥りました。もっとも、官民双方による懸命の復旧作業を通じ、供給面の制約は徐々に緩和されてきました。経営者が「供給責任を果たす」との強い思いをお持ちのことに、感銘を受けました。
供給制約の緩和とともに、復興需要が顕在化してきたことで、熊本県の景気は持ち直しています。家計の生活再建に向けた動きをみますと、衣料品や食器といった非耐久財にはじまり、耐久財にも買い替えが拡がり、家電量販店やホームセンターの売上高は、前年を大きく上回る状況が続いています。
さて、個人消費以外の復興需要はどうでしょう。住宅投資や設備投資では、確かに新たな住宅や建屋の建設が一部に始まっています。ただ、それらは、自己資金で解体を進めた先や、出先の大手企業が中心であり、大多数の被災家屋や地場の中小企業の復旧・復興に向けた動きは、これからです。設備投資はグループ補助金の交付を、住宅投資は公費解体の進捗を待つ状況にあります。公共投資にしても、国の直轄案件は進み始めていますが、県や市などの工事は応急工事に止まり、復旧工事には殆ど手が回っていません。
ただ、住宅、設備、公共投資のいずれも強い復興需要が期待されます。そのことは、9月の熊本短観でもみてとれ、経営者の景況感はV字回復しました。したがって、熊本県の景気はいずれ回復に転じ、その後、2年程度は拡大基調が続くと予想されます。ただし、回復の時期やその後のテンポは、復旧の担い手確保次第という側面が色濃くなっています。
震災を経て、当地の人手不足は深刻化しています。県の有効求人倍率は既往ピークをつけ、熊本短観が示す人手不足感は過去最高の水準です。中でも、建設業従事者やドライバーといった職種で強い人手不足感が窺われ、復旧・復興の制約となっています。当地では、少子高齢化に県外への若年層の流出も加わっており、当面、労働需給の緩和は想定されません。高齢者や女性、外国人労働者の活用の余地はありますが、この先は、生産性を引き上げるほかありません。
その方策の第一は供給面の改革です。規模の拡大や資本装備率の引き上げ、ITを活用した業務革新などが該当します。第二は需要面で、新たな市場開拓や事業への進出です。当地では、「わさもん」と称される進取の気質も根付いています。「儲けたい」という企業家精神、事業意欲が今こそ必要とされています。どうぞピンチを好機に変える気持ちで、挑戦ください。
当地には、そのポテンシャルが十分あります。
2016年11月号掲載
日本銀行熊本支店長
竹内 淳一郎
昭和41年生まれ、大阪府堺市出身、昭和60年3月府立三国丘高校卒業、平成元年3月京都大学経済学部卒業、同年4月日本銀行に入行。国庫局、岡山支店、金融研究所、パリ留学、国際局、香港事務所、調査統計局、人事局、日本経済研究センター出向などを経て、平成24年9月国際局国際調査課長、27年6月熊本支店長
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