各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
「物心両面のBCP(事業継続計画)の必要性」
まず、昨年4月に起きた熊本地震によって被災され、そこから立ち上がろうと復旧・復興に向け、全力で歩みを進めている県民のみなさまに心よりお見舞い申し上げます。
熊本県民テレビも、蒲島知事の掲げる「被災された方々の痛みの最小化」「創造的復興を目指す」「復旧・復興を地域のさらなる発展につなげる」の3原則に深く共鳴し、少しでもみなさまのお役に立てるよう「県民に一番近い、開かれたテレビ局」として、「更に早く正確な情報」「元気になるニュース」をお届けするため日夜、努力を続けています。
おかげさまで、視聴率では、9年連続の三冠獲得(全日、ゴールデン、プライムの時間帯の1位獲得・ビデオリサーチ社熊本地区調査)が実現しました。この7月には、35年間お世話になった世安町から大江の新社屋へ引っ越しも完了し、地震の経験も活かしたBCP(事業継続計画)に優れた新しい放送局に生まれ変わりました。
特徴は、災害にも強い放送システム全体の強靭化が図られたことです。放送局の絶対条件である「テレビ電波」を出し続けるためには、停電への備えが必要です。送電も万が一に備えて2箇所の送電所からの2ルートを確保しました。浸水被害も考慮して、屋上に非常用の発電機を2基設置し、交互に運転させることで過熱を防ぎながら長時間の運転にも耐えられます。マスターと呼ばれる心臓部の送出システムも日本テレビ系列の共通仕様になりパワーアップ。更に、光ファイバーでCM素材をやり取りする機能なども備えた「標準営放システム」と呼ばれるCM運行の切り替えを行うシステムは、全国の系列局が大注目のなか、開発した日本テレビよりも早く、一番乗りの運用を果たしました。一見、何も変わらないように見えますが、密かに「新しい電波」で毎日、番組をお届けしているわけです。
さて、タイトルにもつけた「物心両面のBCP」の「物」の面は、建設中に地震に遭ってもヒビ一つ入らなかった頑丈な社屋と、ご説明したシステムでしっかり守られていますが、問題は「心」の方です。
昔ほど、みなさんが夢中でテレビを見なくなった現実です。放送開始以来ずっと右肩上がりで成長を続けてきたテレビが初めて迎える危機だと思います。
世帯視聴率の減少やテレビ広告費の伸び悩みは年ごとに顕著化してきていて、今までのビジネスモデルに加えて新しい事業計画が必要です。その要因であるインターネットの動画配信やSNS等の勢いは止まりません。電通の調査によれば、昨年の総広告費は6兆2880億で、媒体別では地上波テレビが約1兆8000億なのに対しインターネット関連の広告媒体費は初めて1兆円を超えました。伸び率は遥かにテレビを上回っていて、急速な増殖ともいえるこの現象に、テレビが対処できていない現状があります。
対抗心や敵意をもって臨んでも、未来はスマートフォンの手の中にあります。インターネットの浸透性とテレビ情報の正確性がコラボレーションするテレビの新たなビジネスモデルの構築が未来の課題です。新社屋はその外観のデザインから「新しいアイデアをひねり出すルービックキューブ」だと思っています。社員一丸となって「進化」を始めます。
2017年10月号掲載
(株)熊本県民テレビ
代表取締役社長
梅原
1957(昭和32)年7月2日生まれ、60歳。東京都出身、日本大学芸術学部卒。1981年4月日本テレビ放送網(株)入社、2003年6月編成局チーフ・プロデューサー、2006年1月制作局チーフ・プロデューサー、2009年4月編成局次長兼編成戦略センター長、2010年12月報道局業務管理担当局次長兼NNN事務局長、2012年6月BS日本常務取締役編成局長、2015年6月執行役員情報カルチャー局長、2016年6月熊本県民テレビ専務取締役、2017年6月~現職
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