一般社団法人 熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

「崇城マジック」~情熱の力~

最近、ある起業家教育関係者から「崇城マジック」という言葉を聞いた。それは、ビジネスコンテストで、本学の学生たちが次々と入賞するようになったからだ。NEDO TCPプログラム優秀賞、九州未来アワード大賞、UVGPアントレプレナーシップ賞、起業家甲子園審査委員特別賞、キャンパスベンチャーグランプリ全国大会文部科学大臣賞・テクノロジー部門大賞受賞、これらが昨年度の主な成績である。


「崇城マジック」とは、一体どのような教育をすれば、学部生が大学院生や若手研究者と互角に戦えるようになるのか、それがわからないという意味である。

社会で新しい何かが生まれるには、それを引き起こす要因が必ずある。その原動力は、いつの時代も人間の強い関心や好奇心、そして情熱である。本学理事長・学長の中山峰男は、日本の大学学長の中で、最も起業家教育に熱心であり、その実現に強い情熱を持ち続けてきた一人だ。現在、その熱意の実現に向けて、中島厚秀准教授を中心とした精力的な取り組みが進められている。

本学の起業家教育は3つのステージから構成されている。第1ステージは、「覚醒教育」である。本学では、①学生が起業を身近なものとして捉え、眠れる関心・好奇心を覚醒させる、②起業に必要な経営全般の基礎を学び、それらの知識を活用してチームでビジネスプランを作成する、③イノベーション創出のためのデザイン思考の基礎を修得する科目が、それぞれ設置されている。

第2ステージは、「実践的な共同学習」である。起業に関心を持つ学生の受け皿として2014年に創設されたのが、「起業部」(部員数50名)である。活動拠点としてのワーキングスペースも学内に用意されている。

起業部の部員は、起業プランごとのユニットで起業を目指す。学生同士に触発し合いながら、ビジネスプランの作成や試作品の開発に取り組むのである。また、多様な課題(外部講師やメンター、複数の指導教員による個別指導、活動の定期発表など)を与えることにより、実践的スキルが効率的に修得できるよう配慮されている。

第3ステージは「挑戦学習」である。明確な目標設定は、学習効果を高める有力な手法の1つだ。本学では2014年度よりビジネスプランコンテストを開催、発表の場を提供している。昨年度は、他大学等のチームを含め78チームの参加があった。また、他のビジコンへの積極的参加も促している。特に、オープンコンペへの挑戦は、学生たちのスキル向上にとって有効に機能している。入賞の有無を問わず、学生たちは大会に出るたびに変貌を遂げる。

また、クラウドファンディングによる資金調達で商品の開発、販売といった、起業へ向けてのより実践的な教育にも取り組んでいる。米焼酎リキュールの商品化、焼酎粕を利用した光合成細菌培養キット開発、豆乳をベースに熊本県産フルーツを使用したアイスクリームの商品化などがそうである。さらに、SOJOスタートアップラボ(株)を2017年1月に設立、本学学生の起業支援体制を整えつつある。

「近ごろの若者は、以前にもまして頼りない」-それは表層的な理解に過ぎなかったと、最近私は思っている。彼(彼女)らの大いなる可能性が開花する機会、空間を与えてこなかったのは、実は私たちではなかったかという反省である。私たちは、次代を担う若者たちにもっと挑戦する機会を与えねばならない。もちろん、やるからには「徹底して」である。



2017年10月号掲載

崇城大学 総合教育センター長 永松 俊雄

崇城大学
総合教育センター長
永松 俊雄

1955年生。慶應義塾大学経済学部卒業、熊本大学大学院社会文化科学研究科修了、博士(公共政策学)、熊本県入庁後、県知事秘書、県総合政策局政策調整監、室蘭工業大学大学院教授を経て、現在、崇城大学総合教育センター長、地域共創センター副センター長。日本公共政策学会奨励賞、著作賞、日本地域学会著作賞、日本環境共生学会著述賞などを受賞

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