各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
顧客プライバシーは守れていますか
令和のスタートに、平成を振り返るテレビの特集が賑わった。この30年間で我々の価値観も大きく変わった。その中で一番支持を得て定着したのが「プライバシー」という価値観ではないかと思う。昭和の時代は、夏には戸を開け放ち、蚊帳を吊って、家族で川の字に寝ていた。プライバシーなるものが、そもそも存在しにくい環境だった。私も初めて一人暮らしをした時のうれしさ、開放感は鮮明に覚えている。今でこそ、孤独が、社会的弊害のように言われているが、実は、大家族から核家族化への移行は強制されたものではない。多くの人々がプライバシーのある生活を渇望し、それを実現させたのである。反面、他人のプライバシーは蜜の味である。テレビのワイドショーからネット世界に媒体は移っても、流される情報は芸能人の不倫など、興味本位の噂話が花盛りである。
一方、個人情報に金銭的な価値が生まれ、ネットの持つ拡散力や影響力がさらに強大になると、いかにしてプライバシーを守るかは、企業にとっても軽視できない重要な課題として浮上してきた。事実、顧客情報の漏えい問題が企業倒産にまで発展するケースも出ている。2003年、個人情報保護に関する法律が施行され、個人情報を取り扱う事業者が個人情報を適正に管理する義務が明文化された。もはや「そんなの関係ない」とは言えない。「顧客情報を適正に守れない企業は、市場から退場させられても仕方ない。」という価値観が常識となったのだ。
では、企業ではどのような防衛策をすればいいのだろうか。個人情報といっても企業によって様々であり、その防御策も一様ではない。そこで、企業組織として個人情報を守るマネジメント体制を講じているかに焦点をあて、その体制を整備しているかどうかを審査、認証して、認証企業を増やしていこうという動きが始まった。これがP(プライバシー)マー制度である。もともとヨーロッパの発祥だが、日本でも日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)が発足、1998年からスタートしている。全国的にPマーク制度を推進するために、地域や業界に設立された審査機関団体を認定する。直接的な企業への審査はその審査機関が担うことになる。地域系は全国で6団体あり、九州沖縄地域を管轄しているのが、当財団である。
2006年から活動を開始し、今年で14年目となる。当初、この制度がどこまで普及するか確信があったわけではなかったが、完全に定着したといっていいだろう。当財団が審査して認定した企業数は約800社に上っている。さらに毎年30社程度増加して、右肩上がりの傾向が現在も続いている。業種別にみると、出版、広告等の情報サービスや不動関連を中心に幅広い業種に広がっている。先日、水道工事業者が取得した。個人情報とは無縁のような業種であるが、ある自治体が業務の外部委託に当たり、Pマークの取得を条件としたらしい。
昨年、改正個人情報保護法が施行され、取り扱い情報が5000人以下の小規模事業者にも法の適用が広がった。「あなたの企業では顧客プライバシーが守られていますか。」
審査は有料だが、相談だけなら無料である。気になる方はお気軽に相談していただきたい。
2019年7月号掲載
公益財団法人くまもと産業支援財団
理事長
奥薗 惣幸
昭和32年7月生まれ。昭和56年熊本大学法文学部法学科卒業。昭和56年4月熊本県庁入庁。平成24年4月産業支援課長、平成26年4月新産業振興局長、平成28年4月商工観光労働部長、平成28年7月(公財)くまもと産業支援財団理事長(現職)就任、平成30年3月熊本県庁退職。
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