各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
新型コロナ感染拡大と国のかたち
一昨年に中国・武漢で発生した新型コロナウイルス感染症は、グローバルな人の移動を背景に世界中へと急速に拡散した。感染者数は世界の全ての国にわたっており、日本でも感染者数は1月10日現在で累計59,598人、死亡者数は4,043人を超えている。現在、新型コロナ第3波の渦中にあり、未だ感染の収束のメドは立っていない。
今回の新型コロナウイルス感染症(以下コロナ)の拡大を、社会の発展から考察すると、3つの視点が重要である。1つ目は感染症対策を行う際の国と地方の役割分担の曖昧さである。昨年4月の緊急事態宣言を受けての休業要請や補償のあり方を巡り、国と地方の間で軋轢が生じた。責任の所在が曖昧且つ、現在の地方分権の問題点であることが指摘されており、このための改革が問われている。
2つ目は東京一極集中の脆弱性である。withコロナの長期化や新たなパンデミックへの懸念、首都直下型地震や大規模自然災害のリスクは、わが国全体の持続可能性や強靭性を高める観点から、東京一極集中の流れを地方への流れの創出を必要とすることが、政策的課題である。
3つ目はICTの発展の中でのテレワークの急速な推進である。企業においては、感染拡大の防止や事業活動の維持などの観点からテレワークの導入など働き方の見直しとともに、事業拠点のあり方についても、分散を含めた検討が進められている。テレワークの機能の充実は、オフィスワークの必要が減少する可能性がある。社内でのフェイス・トゥ・フェイスの機能が限られたものとなり、テレワークは単なるICTの発展を超えて、その高度な機能性と許容性の進展によって、一定のオフィスワークに対する代替をもたらす。このことは、ICTの高度の発展が、地域でのビジネス活動を促進させ、地域の活性化に貢献することになるのである。
地方での仕事の可能性が拡大し、新たな人の流れが生まれ、魅力的な地域づくりが促されていくという循環を持続的なものとするために、政府そのものが、デジタル技術を駆使した地方活用、そして、地域社会への人材支援制度などの体制を整えることが必要である。
経済社会の多様性を高め、国の発展を進めるためには、こうした地方分権を踏まえ、しっかりした国土形成を期待したい。
2021年2月号掲載
熊本学園大学長
細江守紀
昭和20年12月1日生(75歳)
福岡市博多区上川端町出身
九州大学理学部・経済学部卒。
九州大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得退学。
昭和50年八幡大学(現・九州国際大学)赴任、昭和58年九州大学経済学部経済工学科赴任。その間、ハーバード大学・インディアナ大学訪問。
平成21年熊本学園大学着任。
経済学部長、学校法人熊本学園評議員、経済学部特任教授を経て、令和2年8月に学長就任
専門はゲーム理論、法と経済学
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