各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
今こそ「経営理念」の確立と浸透を
熊本県中小企業家同友会の皆様方には、本学にいろいろご協力をいただいております。平成21年に本学にて開催されました日本中小企業学会全国大会では、統一論題のご報告をお願いし、また多くの会員の皆様にご参加いただきました。学会開催中の合間を縫って、いたるところで部会等グループに分かれ、非常にご熱心に議論されている光景を拝見いたしました。会員皆様の意識が非常に高く、常に積極的に活動されているご様子がうかがわれ、感銘いたしました。
また、本学商学研究科(大学院)では、会員の方々に講師として、経営現場での経験および貴会の活動で培われた見識をもとにご講義いただき、大学院生にとりましても大変勉強になっております。
貴会におかれましては、各支部・各委員会・各部会等において様々な活動を行われていますが、特に「経営指針を創る会」は興味深い活動のひとつです。第36回景況調査のなかで、「特別調査」として、「経営指針の成文化」についての調査が行われています。成文化されている内容は、経営理念64.8%、経営方針54.5%、経営計画50% という結果が得られています。
熊本県中小企業家同友会創立30周年式典でご講演されました法政大学 坂本光司教授は、「このような不安定・不確定な時代においてこそ、ぶれない総力発揮の経営を推進していくためには、良い経営理念の保有と、その全社員への浸透が必要不可欠である」と主張されています。坂本教授は「中堅・中小企業の経営理念とその浸透」と題した調査研究レポートにおいて、経営理念の有無・全社員への浸透度と企業の業績との関係を分析されています。レポートでは次のような点が明らかにされています。
1.明確な経営理念を有する企業は7割であり、経営理念の無い企業の業績よりはるかによい。
2.社員や顧客等「人」への強い思いのある「良い経営理念」を有する企業の業績は、業績ありき・自社ありきの経営理念を有する企業よりはるかによい。
3.「経営理念」に加え、「経営方針」「信条・クレド」を併せ有する企業の業績は、無い企業よりよい。
4.経営理念が全社員に深く浸透している企業の業績は、あまり浸透していない企業よりよい。
5.経営理念を全社員に深く浸透させる方策として、「経営理念に即して企業の経営計画や社員
の具体的な行動目標等を策定評価している」企業や「経営理念の浸透を目的にした研修や合宿の実施を行っている」企業の業績は、その実施度が低い企業よりよい。
経営を取り巻く環境が激変する今こそ、経営理念・経営方針・経営計画を明確にし、さらにそれを全社員に浸透させるような具体的かつ確実な方策を実行すべきと考えられます。
最後に、熊本学園大学付属産業経営研究所の紹介をさせていただきます。本研究所は、昭和34年に、産業・経済に関連する調査研究を行い、地域の産業経営の発展向上に寄与することを目的として設立されました。具体的な事業内容は、熊本県および関連地域の産業・経営および企業経営に関する調査研究、研究会・講習会・講演会・専門講座の開催、研究所報・研究叢書等の刊行物の発行、資料の収集・整備などです。
なお、外部からの委嘱による調査研究も行います。貴会の「景況調査報告」につきましても、本研究所が責任をもって作成させていただくことになりました。今後とも、貴会、会員の皆様方のご発展のためにお役に立てるよう努力してまいりますので、よろしくお願いいたします。
2013年5月号掲載
熊本学園大学付属産業経営研究所 所長
池上 恭子
昭和34年2月北九州市生まれ。
昭和56年 九州大学経済学部卒業。
会計事務所、経済団体勤務後、平成5年九州大学経済学研究科博士課程修了。
6年熊本学園大学商学部専任講師、助教授を経て、18年教授。
24年産業経営研究所所長。博士(経済学)
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