各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
若者に夢のある職場を
寒い冬もようやく終わり、桜の花咲く春を迎えました。春と言えば、日本では、学業も職業も新たなスタートの季節。春の若葉と、緊張しつつも大きな夢を心に秘めた初々しい新入生や新入社員は、よく似合います。そこで、私も、今回、新規学卒者を中心とした若者の雇用問題をテーマに拙稿を書かせて頂くことにいたしました。
昨今、新規学卒者を含めた若者の雇用は、マスコミの報道にも見られるように大変厳しい情勢にあります。その一方、新規学卒者の早期離職は、あいかわらず高止まりとなっています。このような中、次のような二つの対立した議論がよく聞かれます。 曰く「若者が既成社会の犠牲になっている。」 曰く「若者は我慢が足りない。贅沢を言わなければ仕事などいくらでもある。」 どちらの説が正しいのでしょうか。
まず、若者の雇用の受け皿はどうなっているのか。例えば、新規大卒者に対する求人倍率(全国)を見てみますと、平成21年度採用者に対する求人倍率2.14倍→24年度1.23倍と、1倍は超えてはいるものの、確かに以前よりかなり厳しい状態になっています。特に従業員数1,000人未満の企業については、21年度4.26倍→24年度1.86倍とその減少が顕著です(注:データはリクルートワークス研究所「第27回ワークス大卒求人倍率調査」からの引用)。
しかし、このような「量」の問題以上に憂慮すべきは、「質」の問題です。最近、いわゆる非正規雇用の形態でしか就職できない若者が増えてきています。では、非正規雇用の問題は何か。正規雇用に較べ、労働条件が悪いということもあるでしょう。しかし、それ以上に大きな問題は、その仕事をしていく中で職業能力を伸ばし自らのキャリアに磨きをかけることが難しい、今頑張ることが将来に繋がって行かない、将来に夢が持てないということにあるのではないでしょうか。(その意味で、「贅沢を言わなければ仕事などいくらでもある」というような言い方は、これから長い職業人生を歩んでいかなければならない若者に対しては、慎むべきものと考えます。)
最近の新規学卒者の就職に関してのもう一つの大きな問題は、その就職活動にあります。インターネットの普及で、一人の学生が、有名企業を含めた多数の企業に応募できるようになったことから、膨大な数のエントリーシートを「とにかく」出しておくという風潮が生じ、学生は面接に到達する前に疲れきってしまっています。その一方、企業の側では、学生への対応に多大なエネルギーを割かざるを得なくなっています。
以上のような状況を改善するためには、中小企業の皆様の役割が大変大きいものと、私は考えています。
まず、企業の中で働くことがその者のキャリア形成に繋がっていくような職場を作って頂くこと、そして、そのことを学生に対し、企業のPRの場や採用面接の場で積極的にアピールして頂くことが重要です。なお、新規学卒者に対する求人をハローワークに提出される企業の皆様に対しては、その広報について私どもとしても支援させて頂いております。労働局またはハローワークまでお問合せください。
さて、今、若者に対し「働く」ことの意味を伝えていかなければならない、といった議論がなされておりますが、熊本県中小企業家同友会様におかれましては、既にそのような活動に力を入れていらっしゃると伺っております。このような活動は、企業、教育関係者、行政が密接に連携して行う必要があります。今後とも、労働行政に対し、ご理解、ご支援のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。
2012年4月号掲載
熊本労働局 局長
峯 作二郎
昭和31年10月26日生まれ、神奈川県出身。昭和56年3月東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。
同年4月労働省(現厚生労働省)入省。
平成2年職業安定局業務調整課中央職業指導官、平成4年在リオ・デ・ジャネイロ日本国総領事館領事、平成8年愛知県労働部職業安定課長、
平成14年職業能力開発局職業意識啓発推進室長、平成19年(独)高齢・障害者雇用支援機構障害者助成部長、平成23年4月熊本労働局長
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